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サマルカンドで警官とランチ【ウズベキスタン旅①】

2017年8月、お盆をフル活用した9泊11日のウズベキスタンの旅でたくさんの思い出ができた。

なぜウズベキスタンに行きたいと思ったかというと、小学生の時にテレビでシルクロードのどこかの国を訪れていて、そこでやたらとTVディレクターが現地の人に暖かく、というか熱烈にもてなされている姿を見たことがきっかけだ。
なんでも、シルクロードの人々は、古来から旅人を丁重にもてなす文化があるそうで、私はそんな文化を感じたかった。性格が内向的で、なかなか人に心を開くことができない自分の性格から遠く離れた文化に興味を持ったし、初対面の人に猛烈に歓迎される体験をしてみたかったのだ。

実際に行ってみてどうだったのか?
想像をはるかに超えた人懐っこさで、今まで30カ国ほど旅をした中で、ウズベキスタンが旅をして一番楽しかったし、圧倒的に自慢できる思い出になった。これから、何回かに分けて旅のエピソードを紹介していきたい。

サマルカンドで警官とランチ

サマルカンド観光の目玉、レギスタン広場

サマルカンドは古くからオアシスの町として栄え、14-15世紀にはティムール朝の首都となった歴史ある都市だ。サマルカンド観光の目玉はこのレギスタン広場。3つの建物はマドラサといって、イスラム教の神学校として建設された。イスラム教では偶像崇拝が禁止されているので、動物などシンボルになるものは装飾として使うことができず、この独特のモザイク柄が発達したんだそう。

中もピッカピカで模様が綺麗!!

先ほどイスラム教では偶像崇拝のため動物や人などを装飾で描くことを禁止と説明したが、実はなぜだかサマルカンドではそのへん緩かったのか、虎と人の顔の装飾がある。当時の人はどう解釈したのだろうか、気になる。

◯で囲んだところが通常のイスラム教では問題の動物と人面の装飾

前置きが長くなってしまったが、ここで警察官たちとランチをしたのだ。ちなみに、レギスタン広場にはレストランは併設されていない。

出会いは建物の裏手にあるお手洗い前だった。私は友人とお手洗いにいき、先に出て友人を待っていた。その建物の裏手には、派手なテーブルクロスが敷かれた20人ほど座れそうな簡素なテーブルがあった。そこで男性がなにやら食事の準備をしているのを、ぼうっと遠くから眺めていた。特に何も考えずにぼうっと見ていたら、笑顔でこちらを手招きする人が見えた。少しして、どうやら私を呼んでいるのだと気づいた。男性だったけど、警官っぽい制服を着ていて、しかもたくさんの人が通る観光地のど真ん中だったから、きっと変なことはされないだろうと、とりあえず何を伝えたいのか、聞きにいった。

男性たちのいるテーブルを背にして撮った写真。人もいっぱいいるし大丈夫だろう。

テーブルに近づくと、食事の準備がだいぶ進んでいた。お皿にスプーン、コップが並べられている。何人かいるその男性警官たちの一人が、片言の英語が話せて、一緒にご飯を食べようと言いたいのだとわかった。

異国の地で知らない人とご飯というシチュエーションは憧れていたものの、多数の男性と野外でとは。これだけ聞くとだいぶ怪しいが、この人たちは明らかにさっきまでこの建物の周りを警備してた制服を着た警官らしいし、見た目的にもフレンドリーさ抜群で騙すようには見えない。テーブルは屋外にあって人通りもあるし、食べ物に変なものを混ぜられなければリスクは低いだろうと判断して、トイレから帰ってきた友人に状況を説明してから、このランチに加わってみることに決めた。


ウズベキスタン名物のプロフ(羊肉の炊き込みご飯)

こちらがそのランチ!ウズベキスタン名物のプロフ(羊肉の炊き込みご飯)とトマトと玉ねぎときゅうりのサラダ。ナン(ウズベキスタンのパン)はテーブルクロスに直置きだ。ウズベキスタンの天気は乾燥していて寒暖差があり、日中はとても暑いのだが、暑さ対策として熱い緑茶や紅茶を飲むことが習慣になっている。警官たちはだいたい熱いお茶を飲んでいたが、私たちには冷えたコーラを注いでくれた。

警官たちが15人くらいぞろぞろと集まり、食事を始めようとしたとき、片言の英語が話せる彼が私たちに何かを伝えようとした。目をつぶって、手を前で握ってと。
ああ、食前のお祈りか!と気づき、同じポーズをして、仲間のうちの一人が、お祈りの文句を短く唱えてから、食事開始。
食べるみんなの様子の写真を撮ろうとしたところ、さっきまで優しかった彼らが一斉に真顔になってNo!のサインをとってきた。僕たちポリスだから撮影は禁止だと。まあ一応公務員だしね、写真はNGだよね。でも、休み時間とはいえ外国人の女の子にウズベキスタン人の税金から出ているであろうご飯を奢ることはOKなことなのか?(美味しくいただいておいてなんですけど)

片言でしか言葉が伝わらなかったし、年はいくつかとか、どこから来たのかとかくらいしか話さなかったと思う。一同が、20代女子2人のランチへの参加をとても楽しんでいるようだったのはすごく伝わった。私も友人も、外国でお昼休みの警察官に突然ご飯を奢ってもらうという、なかなか特殊な状況にどきまぎしながら、とても楽しんだ。
食事中、美味しい?と気にかけてくれて、食後にはデザートのスイカ一玉をみんなで分け合って食べた。最後にまたお祈りの挨拶をして、みんなそれぞれの職務へと戻っていった。

食事代をとられるのかとか、この後どこかへしつこく誘ってくるのだろうかと警戒したものの、そんな心配は無用でみんなあっさり職務へと戻っていき、私と友人がレギスタン広場を回る途中で再会すると、職務中の顰めっ面から一変して満面の笑顔で挨拶をしてくれた。
めちゃくちゃ警戒して接してしまったけれど、本当にただのとても良い人たちだったのだ。

5年経って、30代になってみると、彼らにもだいぶ下心があるよなと冷静になるけれど、それでも私たちの旅を優しさで彩ってくれた彼らのことは忘れられない。
小学生の頃から憧れていた、旅人としてシルクロードの人に熱烈にもてなされる体験。実際にもてなされてみると、こんなにも幸せで心が暖まるんだと感動した。

冷静になってみると思う。あの心優しい警察官たちは、たまにこうやって東洋から来た女の子を見かけたらナンパしてプロフをご馳走するのだろうか。いろんなブログを見たけれど、今まで警官にお昼に誘われたという記事は見当たらなかったので、きっとよくやることじゃないんだと信じたい気持ちもあるが、やってるのだろうな。
もし同じような経験をした方がいたらぜひコメントをいただきたい。

とにかく、2人の若い東アジア系の女子(当時20代)が旅をしているのはおそらくウズベキスタン人にとっては物珍しいことらしく、道を歩いているだけで「どこから来たのか?」「ヤポン?」(ウズベク語で”日本”)と声をかけられる。彼らのおかげでどれだけ旅が楽しかったことか。

次回は、ウズベク人のサマルカンド家族旅行にジョインした話。

次のお話の登場人物
サマルカンドのナンを抱えたおじさんのマグネット。左の彼は今、我が家の冷蔵庫にいる。

#この街がすき  #旅のフォトアルバム #旅行 #ウズベキスタン #海外旅行

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