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アイドルをのぞき見る

アイドルマスターシャイニーカラーズのスチルは、しばしばカメラの存在が強く示唆されています。これは、具体的な空間のなかでの彼女たちとの距離を強く意識させる効果があると思います。

距離とは関係性です。

たとえば、寄りのイラストでは、アイドルとプロデューサーの親密な関係、クローズドでプライベートな空間を経験することができます。

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しかし、今回着目するのはもう一つの「寄り」、それは、プロデューサーでも、神の視点でもない、「望遠レンズで捉えられた」アイドル達の姿です。


ガイドライン:アイドルとの距離と自律

アイドルの姿が「ズームアップされたもの」であると仮定してイラストを見ることで、彼女達の実在をどのように感じることができるのか。そのためのガイドとして、予想されうる2つの効果を述べておきます。


「アイドルの前後にめちゃくちゃ広い空間があるじゃん」感
ズームレンズで撮られているということは、アイドルと「カメラ」の間に10m〜100mほどの距離が必要になります。そして、その背景は圧縮効果により、見た目よりかなり後ろにある、ということになります。つまり、「アイドルの周囲にあるなあ、と意識している空間」のスケール感覚が、めちゃくちゃ広くなる、ということです。アイドルたちは急激に、「舞台」を超えた、広大な空間の中に生き始めるのではないか。


「どこにも関係なく、実在しているなあ」感
「遠くから撮っている」ということは、視線において彼女達がこちらを意識しない、一方的な「のぞき見」であるということを意味しています。これはストーカーがどうとかいう話ではありません。「のぞき見」の感覚は、彼女たちがプレイヤー、そして神(=作者)との関係を無視し、自然で、自律し、空間の中に優雅に存在しているという強い感覚を得られる方法だということです。


望遠の感覚は、それが物語ではなく、作者が存在しない、空間の出来事であるという錯覚を引き起こすのです。


ギャラリー

望遠レンズの特徴としては背景が前景に対して大きくなる(圧縮効果)、ボケやすい手振れがしやすいといった要素が挙げられます。これらを踏まえつつ、視点との距離・空間を感じるイラストを集めたました。フレームの外側や画面の手前に、想像を働かせてみてください。


【シー・イズ】白瀬咲耶

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【#SS】市川雛菜

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【UNTITLED】樋口円香

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【ノー墨・勝者フェイス】黛冬優子

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【かしまし、みっつの願いごと】大崎甜花

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【腹が減っては遊びはできぬ】芹沢あさひ

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【幸せのりんご飴】大崎甘奈

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【ドゥワッチャラブ!】桑山千雪

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【冬の日の『贈り物』】大崎甘奈

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【Summer for Us】大崎甜花

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【意地っ張りサンセット】西城樹里

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【秋陽のスケッチ】西城樹里

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【娘・娘・謹・賀】幽谷霧子

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【ぐるもこ・まふ×2】園田智代子

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【秘めやかファンサービス】白瀬咲耶

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【輪になって】三峰結華

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【游魚】樋口円香

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【音、雨、パシャ、リ】櫻木真乃

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追記:盗撮・監視

さて、この記事を書いた後、賛否が分かれた見守りカメラ企画や衣服の展示がありました。

まあ、実際の人間でやったら最悪です。ただ個人的には、そうは言っても架空のキャラクターだし、後は需要の問題かと思います。そもそもシャニマス全体の演出には、後ろ暗い、監視や盗撮、のぞき趣味的な快楽が通底していると思っているので、それが不快感によって拒絶されるラインというのがはっきり現れたところに興味があります。(まあ、ノリが寒いというのは別軸でありましたが)

オフビートな映画のように倫理的に評価されている断片的な生活の描写と、犯罪臭漂うブルセラ的演出の境界線はどこにあるのか。これらに対して感じている実在性の快楽は本当に別物なのか。

不快でありながらも、ここにある程度自覚的になりながら、騙し騙しラインを設定することしかできないのではないか。そんな問題を持っている企画になったんじゃないかと思っています。


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