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  読書感想文たち

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ぼくが書いた読書感想文たちをまとめています。ちなみに「がんばって、大人になって」という作品はありがたいことにポプラ社様主催の「かがみの孤城読書感想文コンテスト」にて賞をいただいて…
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2022年8月の記事一覧

ソロモンの犬/道尾秀介-読書感想文-

ソロモンの犬/道尾秀介-読書感想文-

天気予報にもなかった突然の土砂降り。
雨宿りのために、秋内はカフェに立ち寄る。

マスターにコーヒーを注文し、旧型のテレビを眺めた。

ニュースが流れている。
ちらつく画面でも、口の動きだけで何を言っているのかわかる。
秋内には、わかる。

するとそこに、大学の同級生である京也、ひろ子、智佳が偶然にも来店した。

4人でテーブルを囲むと、京也が囁く。

なにも言葉を返さないひろ子、智佳に代わって、

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マリアビートル/伊坂幸太郎〜読書感想文〜

マリアビートル/伊坂幸太郎〜読書感想文〜

東京駅から北上する東北新幹線。
車内では〈殺し屋〉たちによる静かな死闘が繰り広げられていた。

幼い息子の仇討ちを企てる、元殺し屋「木村」。
優等生の裏に悪魔のような心を隠し持つ中学生「王子」。
闇社会の大物から密命を受けた、腕利きの二人組「蜜柑」と「檸檬」。
とにかく運の悪い、気弱な殺し屋「天道虫」。

狙う者と狙われる者が交差する車内。
新幹線という限られた空間で、〈殺し屋〉たちの運命が動きだ

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氷菓/米澤穂信〜読書感想文〜

氷菓/米澤穂信〜読書感想文〜

岐阜県のとある進学校・神山高校。
珍奇な部活が多く、毎年の文化祭に全力を入れている、曰く"普通の学校"。

特別棟4階の端にあるのは古典部部室。

4人の高校1年生が、今日もここを舞台に
薔薇色か、あるいは灰色の高校生活を謳歌する。

やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことは手短に。上記をモットーにかかげるのは
主人公・折木奉太郎。
同校の卒業生でもある姉・折木供恵の勧めで、

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ただいま神様当番/青山美智子〜読書感想文〜

ただいま神様当番/青山美智子〜読書感想文〜

「わし?わし、神様」
「お願いごと、きいて」

目の前に謎の老人が現れ、突然そう言われたら。
しかもじぶんの腕にデカデカと神様当番なんて文字が書かれていて、お願いごとを聞かないとそれが消えないと言われたら。

私ならたぶん、「なんで自分ばっかり!」なんて言って、すごく落ちこむ。

何かが欲しい、誰か。1番目の主人公・水原咲良。
彼氏はおらず、友人は結婚し、合コンに呼ばれてもあくまで数合わせ。
大好

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琥珀の夏/辻村深月 〜読書感想文〜

琥珀の夏/辻村深月 〜読書感想文〜

夏と言われれば、何を思い浮かべますか?
という質問を、過去に何度かされたことがある。

私は去年から、この質問に「琥珀の夏だ」と答えることにした。

夏の終わりを感じたときの、あのなんとも言えない切なさ。

この後の人生、あと何十回も夏を体験するだろうに、まるでもう二度と会えないものとの別れ告げるかのような寂しさ。

その寂しさを感じる前に、
夏がまだまだ終わらないうちに、
琥珀の夏を読みたいのだ

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