『ボードゲーム デザイナー ガイドブック』に学ぶ、創造と伝え方のヒント
『ボードゲーム デザイナー ガイドブック』という本が、ボードゲームだけでなく、なにか新しいものをつくる人にとって大変役立つ内容だったので紹介したいと思います。
著者はドイツのボードゲーム評論家、ボードゲームデザイナーのトム・ヴェルネック氏。氏はドイツ年間ゲーム大賞の立ち上げメンバーだそうです。
ちなみに冒頭から思い切り余談ですが、このドイツ年間ゲーム大賞というのは、非常に高い意識で運営されていて、すてきです。
この賞はボードゲームメーカーや販売者といったステークホルダーから徹底的に独立し、中立な審査員が選定することを旨としています。ファンたちに、純粋に面白いゲームを推薦することに全力をかけているのです。
僕はいちゲームファンとして、購入するゲームを選ぶ際に大いに参考にしています。この賞を取ったボードゲームで遊ぶのであれば、はじめての人でも、ボードゲームというジャンルに失望することはない、と断言できます。
過去には『カタン』や『ディクシット』、『カルカソンヌ』といった名作たちが受賞しています。僕は受賞作品の中では『コードネーム』が大好きです。なんら斬新なギミックがあるわけではないのに、誰もがすぐに覚えられて、何度も新鮮に楽しめるゲームです。
パッケージにこれらのマークが描かれているゲームが目印です。
Spiel des Jahres(ドイツ年間ゲーム大賞)のサイトより引用
ちなみに似た名前の「ドイツゲーム賞」はゲームファンの投票で選ばれるので全然違うものです。
閑話休題。というわけで本書『ボードゲーム デザイナー ガイドブック』は、そんなイケてる、ボードゲーム界のレジェンドが書いた本です。
内容はボードゲームデザイナーがつくるルールブックらしく、入り口から出口までが、丁寧に網羅されているという印象でした。いかにしてゲームを発明するのか、形にするのか、そしてどうやって売るのか。
僕がこの本を特に「信用できる…」と感じたのは、第三章『用語の説明』、第四章『「ゲーム」とは何か』が設けられていた点です。
ボードゲームのルールブックでは、同じ概念を指す用語が説明もなく混在するのはご法度です(例:コマのことを「駒」と書いたり「ミープル」と書いたりすること)。これらの章では、そんな書籍内で使用される用語に対する、著者の姿勢が表明されています。
それはもちろん、通常の本作りでも当たり前のことなのですが、できてないものも意外と多く、読者の混乱のもとになります。
本書はこの章を設けることで、改めてその姿勢を堂々と表明すると共に、読み手に対して、「言葉の使い方で失敗を起こさないように」という強いメッセージを伝えてくれています。
ボードゲームに限らず、新しいものを作ったら、その説明をする必要が出てきます。そのときに正しい言葉が使われていないことで、魅力や内容が望む通りに伝わらないという悲劇が起こるのは避けなくてはいけません。
いいものを作るだけ、つまり「だれも来ない無人島でお祭り」をしているだけでは意味がない、とよく塩谷舞さんがおっしゃっていますが、用語が統一されていないということはいわば、お客さんを呼ぶための狼煙の色が違ったり、伝えているメッセージがバラバラな状態と言えるでしょう。
「これは一体なんのことを言っているんだ?」「どれが正しい情報なの?」
そんなふうに、伝えたつもりが伝わっていないという悲劇は、どんなジャンルでもままある気がします。
ボードゲームはアナログであるがゆえに、ルールブック作りなどでその点の配慮のノウハウが溜まっているジャンルであります(ボードゲームそれ自体を発信する方法は、今後各自が大いに模索していくべきだと思いますが…)。
よって新しいものをつくって、伝えたいと思った時、その言葉をつくるために、本書に書かれているノウハウは大いに役立つと思います。
ちなみに本書の発売日は2018/5/14ですが、先日開催されたゲームマーケット2018にて先行販売されていたので、僕はそちらで入手しました。
Amazonでは予約段階でカテゴリー内のベストセラーになっています。多くの方に読まれてほしい本なので、うれしい限りです。ボードゲームをつくりたいという方以外でも、きっとタメになる一冊です。
ボードゲーム デザイナー ガイドブック 〜ボードゲーム デザイナーを目指す人への実践的なアドバイス
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