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家族のこと

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娘や夫のはなし
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2021年2月の記事一覧

なんでもない日にケーキを買う話

なんでもない日にケーキを買う話

踏んだら痛いことは知っていた。
現に、ジンジンとした痛みが私の足裏に広がっている。

カーテンを開けると、リビングに散乱したカラフルなブロックが色あざやかに映った。惨状を知っていたのに、娘がねむる横ですべてあきらめて目を閉じた昨晩の自分を、苦々しく思う。

重いはきだし窓を開けると、澄んだ空気が足元をすうっとかけ抜けた。
ベランダに出て太陽が差す場所へ手をかかげると、春になりたての光が皮膚の薄皮を

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残したい景色はいつも目の前にあって、嵐のように去る話

残したい景色はいつも目の前にあって、嵐のように去る話

無謀にも、「覚えておきたい」と思う。
人は忘れる生き物なのに。



外に出ると、3歳の娘と私は手を繋ぐ。
玄関を出て、娘は左手を差し出す。目は行く先のみを見ている。
娘の頭の横で宙に浮いている小さな手は、握り返されるのを静かに待っている。その手をぎゅっと掴むと、弾かれたように駆け出す。

待って、早いよ。そう言って、娘の揺れる髪の毛と、きゅっと上がった頬を斜め後ろから見る。喜びが、小さな身体か

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夫への育児賛歌の話

夫への育児賛歌の話

目が覚めると、寝室にひとりきりだった。

隣に寝ていたはずの3歳の娘も、その娘を私と挟むように寝ていた夫もいない。娘が寝ていたはずの場所を手のひらで撫でると、指先が軽い音を立てて滑った。
リビングから娘の笑い声が小さく聞こえ、ぼんやりとしていた頭が徐々に晴れてゆく。カーテンの隙間から、じんわり光が漏れている。朝だ。
時計を見ると、9時をとうに過ぎていた。



リビングのドアを開けると、炊きたて

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春と魔法の話

春と魔法の話

春の花を見つけて、娘が私をあたためてくれた話。



これ、なずなじゃない?

「なずなって、なに?」

ぽっと赤くなった娘の頬。冷たい風がひゅるりと撫でて、ニット帽からはみ出した髪の毛を揺らす。足元でなずなの茎が小さくしなる。

せり、なずな。ごぎょう、はこべら、ほとけのざ。すずな、すずしろ。

ぽかんとした顔でこちらを見ている。かかはなにを言い出したのか、と娘は思っているのだろう。
たまに、

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