金の蔵、定額飲み放題について

はじめに

金の蔵の定額飲み放題が最近話題となっている。この制度は今年の3月から販売しており、徐々に認知が高まり利用者が増えてきたと考えられる。

この制度は我々サラリーマンにとっては非常に有難いことだが、金の蔵的にはどうなるのだろうか。先ほど引用した記事では、「アプリ決済への布石」と記載されていた。

今回は金の蔵を運営している三光マーケティングフーズの有価証券報告書を用いた経営分析の観点から、今回の飲み放題定額制について分析したい。

居酒屋市場動向

まず、居酒屋業態が置かれている事業環境についておさらいしたい。日本フードサービス協会によると2018年の外食市場は前年比売上高が102.3%、店舗数100.4%、客数100.8%、客単価101.5%を記録した。全ての数値が微増しており、売上高に関しては4年連続で前年を超える結果となった。昨年、外食市場が25兆円を突破したことが話題となった。

しかし、一方で金の蔵をはじめとする居酒屋業態が置かれた状況は非常に厳しいものとなっている。前年比で売上98.5%、店舗数98.3%、客数98.8%、客単価99.6%と全ての数値で微減した。売上と客数に至っては10年連続で前年を割れを経験している。ここ数年は「下げ止まり」傾向となってはいるが、底が見えない状況が続いているのは変わらない。

金の蔵の決済

金の蔵を運営する三光マーケティングフーズも厳しい居酒屋業界で苦戦が続いている。

このようにマーケティングフーズは平成26年度と単純比較して、トップラインが64%となっている。ここまでトップラインが下がれば、打ち手が少ないのが現状であろうと推察される。

三光マーケティングフーズの有価証券には、金の蔵と来客人数と販売実績が記載されている。それを表にし、平均客単価を推察した。

このように明らかに来客数が減少し、それが売上の減少に連なっている。

金の蔵の収益分析

では、今回金の蔵が提供している定額飲み放題制度はどのような形で売上や利益に貢献するか考察してみたい。

まず、外食産業の売上は「平均単価×客数」ではあるが、居酒屋等の飲食店の売上を分析するには、下図のように分解する必要がある。

飲食店の売上は、飲料単価と食事料金に分けて考える必要がある。これは一般的にFD比率と呼ばれ、飲食店経営の重要な指標となっている。

金の蔵単体でのFD比率は有価証券には記載されておらず、三光マーケティングフーズ全体の比率を参考数値として用いる。三光マーケティングフーズ全体では、原材料で、食材費:飲料費=56%:44%である。遅く三光マーケティングフーズ全体のFD比率は、ほぼ50%ずつではないかと考えられる。

一般的には、飲料より食事の方が売上に与えるインパクトは大きく、逆に飲料は利益に与える影響が大きい。このことは、それぞれの限界利益と限界利益率にも大きな影響を与える。換言すれば、飲料は事実上の値下げに耐えられる商品構成であるのに対して、食事は利益が出にくい状況である。

定額飲み放題制度が与える影響

ここまでで有価証券と三光マーケティングフーズ全体の利益構造について言及した。ここからは、定額飲み放題制度が与える影響について分析していく。

定額飲み放題制度が金の蔵に与える影響は、来客数の増加と平均客単価の向上の2点にある。これを図式化すると以下のようになる。

赤枠で囲った部分が金の蔵の収益に与える部分である。また、今回の定額飲み放題制度は新規顧客を流入するだけでなく、それをリピーターとして囲い込み、そのリピーターが新たな新規顧客を連れてくるという循環を想定している。それにより、近年の来客数減少に歯止めをかけることが狙いだと思われる。

また、来客数の分解は新規顧客とリピート客以外にも分けることができる。

定額飲み放題制度の循環サイクルの成功は、来客組数の増加と一組当たりの人数増加が鍵となる。なぜなら、一般的に居酒屋業態では一組当たりの人数が多いほど平均単価が上昇するためである。ここで例として取り上げている串カツ田中の全面禁煙化によるファミリー層の取込は、まさに平均組人数の増加が期待できる施策であり、子供のソフトドリンク飲料による利益貢献を期待したものである。むろん、食べ盛の子供による食事料金の増加も期待したものだが。

まとめ

このように「定額飲み放題制度」について階段を登りながら分析していくと、今回この施策の意味が見えてくる。つまり、金の蔵の「定額飲み放題制度」は顧客に来店する目的を与えて集客を促し、その際には一組当たりの人数が増加するように仕向ける施策を盛り込むことにより、表出する来客数を増加させる狙いがある。そして、それらが実際の食事料金の向上に繋がることを期待するものである。

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