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ボーンマン 〜生まれた男〜

突拍子もない事だ。ある日街の真ん中に奇妙な卵が置いてあった。住人は猟銃やハンマーなんかを持ってきて警戒する訳だ。普段から仲が悪いくせに、こういう時だけ団結する。俺はその様子を2階の自室の窓から双眼鏡で眺めていた。住人どもが不安そうな顔をして卵に近づく姿は見もので、暇を謳歌するこの街で今の所唯一の道楽だ。しかしあの卵の凄いところは銃でもハンマーでも壊せない。おまけに大きく、なんの卵かすらもわからない。運ぼうにも重そうで、結局何も出来ず住人たちは途方に暮れていた。


住人たちが卵の事を諦めた後、俺はその夜卵に近づいてみた。誰もいない夜の町はどこか興奮する。いや、なんの面白みもないこの町に強すぎるスパイスが降ってきたようなこの感触。確実に言える、この興奮はこの卵のせいだ。さて、不気味な模様が刻まれているのと、やたら大きい事を除けば普通の卵だ。手で叩けば割れそうな気がするが、なぜ銃でもハンマーでも壊れなかったのだろうか。俺が試しに卵の中間をコンコンと叩くと、僅かだが小さい穴があく。慌てて離れ、俺は持っていたナイフを構えた。まさか、もう何か生まれるのではないだろうか。そして予想通り、卵が孵化し始めた。青や黄色、緑の優しい色に包まれながらゆっくりとそれは生まれた。


男だ、男が生まれた。だが、その姿はそれ以上口に出す事も、考える事も許されない、そんな気がした。


その時だ、ハッと目を覚ました。いつもの朝だ、隣のオヤジがババアと喧嘩している。相変わらずうるさい。いや、そんな事よりなぜベッドの上にいるんだ?卵は、卵はどうなった?俺は起き上がり窓を覗くと卵は未だ住人たちの不安の種となっている様子だったが、割れた形跡はない。夢だったのだろうか。夢とはいえ、どこかこう恐ろしいというか、なんか救われたような、でもこれ以上考えるのは悪いことのようにも思えてしまう。


あの男は、誰だったのだろう。


その時、1階から母の声がする。どうやら朝食の時間のようだ。俺は急いで階段を降りてリビングへ向かった。相変わらず貧相な食事だ、トーストと目玉焼きだけか。俺が母親に文句を言うと、母は過剰に反応し俺に説教をしてくる。とてもうるさく、とても目障り、いつもは起こらない感情。


説教が終わると、ジャムを塗るためのナイフを手に持ち、母に近づいていた。どうしてか、そうしないといけない気がしたから。生まれた理由を探してるかのようだ。


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楽しんでいただけましたか?卵から生まれた彼は、何者なんでしょうね。もしかしたら、私も皆さんもよく知っている存在なのかもしれません。

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