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錆びた兵

この鉄臭さは本当に鉄の臭いなのだろうか。

背負っている新品のリュックに似合わない光景が広がっている。


機械兵の骸はそこかしこに広がり、この戦争がいかに鉄と火薬で争われているかわかる。

人の死体なぞ滅多にない、ほとんどが機械兵だ。

だが熱くこもった空気はどこか血の匂いを連想させる。

私の役目は、戦場の跡地からまだ役に立ちそうなものを拾い基地に持って帰ること。

この仕事の楽なところは、人の骸から漁らなくて良い事だ。

あのぶにぶにした感触は、考えたくもない。

私が1人歩いていると、奇妙な光景を見た。

機械兵だ。

敵国の赤い機械兵。

細長い体に盾と剣を持っている。

しかし油や砂のせいか、錆びついておりひどく軋む音がする。

装甲もボロボロで、子供が羨むほどの格好良さはない。

動いている機械兵がこいつだけだから、尚のこと軋む音が耳に響く。


機会兵は私が目撃する前から空間をただ闇雲に切り裂いていたようだ。

私がそっと近づくと、変な事を喋りながら剣を振っていた。

「敵め、参ったか。参ったか。」

機会兵はまだ、戦争の中にいた。

私の事は目に入っているだろうが認識していない感じだ。

その滑稽で勇敢な姿に、私は大声で小芝居をした。

「や、やられたーー!」

誰が見ても酷い演技だ。

だがその言葉を最後に、機械兵は剣と盾を捨て「勝利、勝利!」と叫んで生き絶えた。

彼が倒れた後、私は彼の剣をそっと回収した。

彼の熱のこもった錆の香りだけは、今も鼻に残ってる。


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