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ピーチ太郎〜とりあえず出会いから出発まで編〜

むかーしむかし、あるところにそこそこイケメンのお兄さんとまぁまぁ美人なお姉さんの兄妹が山奥の村で暮らしていました。(兄18、妹17)

「兄貴、新しいスマホ買ってくれよ。」

「うーん、芝刈りのアルバイトではキツイかなー。」

「じゃあ私もバイトするから半分出してよ。」

「えー、エッチなバイトはダメだよ。」

「身内を信じろや。」


後日、兄は山へ芝刈りのバイトに、妹は川で洗濯をするアルバイトに行きました。妹は新しいスマホを買って貰うため沢山の洗濯物を川で洗ってはひたすら干すを繰り返していました。

「この量1日でやんのー?引き受けたとはいえ洗濯するの私だけじゃーん。あー、めんどー。こんなんで男のふんどしとか洗いたくないわ〜。」

妹が文句を言いながら洗濯をしていると川上から大きな桃の頭をしたふんどし一丁の人間(?)が大きな桶に体育座りで乗りながらどんぶらこどんぶらこと流れてきました。それを見た妹はインターネットで「疲労 幻覚」と検索しました。

「いや、夢じゃないよね!?あのー!大丈夫ですかぁー!?」

妹が声をかけると、桃の頭の人間は妹の方へ振り向きこう答えました。

「え、めっちゃカワイイ!人生初ナンパじゃね!?」

「うわ、ほぼ全裸のクセにめっちゃ元気!てかなんでふんどし一丁なのこいつ!?」 


妹はとにかく放っておけなかったので、バイト終わりに桃の頭をした男を連れて帰りました。すると同じ時刻に帰ってきた兄は大変激怒しました。

「だからエッチなバイトはやめなさいと言ってるでしょうが!!」

「だから身内を信じろや!」

「ワオ!お兄さんめっちゃイケメンじゃん!」


ひとまず機嫌を取り戻した兄は桃の頭の男に服を貸し、食事を与えました。

「サンマうめぇ!最近サンマ高くね?」

「(桃がサンマ食べてる。)」

「(桃がサンマ食べてる。)」

兄と妹は男の名前や住所を聞きましたが、男はどこから来たのか、はたまた自分の名前さえ知りませんでした。唯一知ることが出来たのは、やたら軽いということでした。

「とにかく、人生楽しんだもん勝ちじゃね?」

「君は楽観的過ぎるよ。」

兄はそのやたらチャラい性格と桃の頭をしていることから、彼をピーチ太郎と名付けました。

「ワオ!キラキラネームじゃん!大切にする!」

「ごめんね、なんか君にはそれしかつけられなかったよ。」

「兄貴、これはしゃーない。」


ピーチ太郎は自称永遠の16歳を名乗りながら兄弟のお家へ居候する事になりました。兄は芝刈りへ、妹は洗濯へ、そしてピーチ太郎は会計士として働き始めました。

「電卓をポチポチするだけの簡単なお仕事ぉ!」

「あんたもう少し性格を加味した職にしなさいよ。」


数日後、ピーチ太郎はすくすくと成長する事はありませんでしたが村で1番の人気者になりました。

「ヘイアニキ!今日も村で写真いっぱい撮られたYO!」

「ネットのおもちゃにされないよう気をつけるんだよ。この間も動画サイトに顔がアップロードされてたよ。」

「でも皆んな馬鹿じゃね?桃の何が珍しくて写真撮ってるわけ?」

「明日鏡を買ってきてあげるよ。」



ピーチ太郎は数ヶ月後兄弟の元で暮らして思いました。

「アニキ、アネキ、うちってもしかして貧乏?」

「あんたストレートに物事言うわね。そうよ、あんたが来るずっと前から貧乏よ。」

「なんで?あ、もしかして『転生したらチートなしで貧乏生活!?』的な、、、!」

「あんたほどファンタジーな理由ではないから安心しな。」

兄妹はピーチ太郎に「鬼」のお話をしました。数年前から兄妹の住む村は「鬼ヶ島」という場所に住む悪名高い鬼たちに大量の年貢を納めなければいけませんでした。それを聞いたピーチ太郎はある事に気がつきます。

「あれ、オレが働いてる会社の本社鬼ヶ島じゃね?」

「君、鬼の所の会計士だったの!?」


ピーチ太郎は罪もない村から膨大な年貢を取り立てる鬼たちに怒りを覚えました。

「危うくオレも同罪じゃん!?」

「今回の件はしょうがないんじゃないかな。知らなかったんだし。」

「でもアニキ、貧乏なのになんでアネキにはバイトあまりさせなかったんだYO?アネキがバイトしたの最近でしょ?」

「いや、だって、目を離したらすぐにエッチなバイトに行きそうだったから心配で、、、。」

「それは、うん、アニキが正しい。」

「お前ら私をどういう目で見てる?」


ピーチ太郎は決心しました。悪名高い鬼を退治すると。

「理不尽反対!オレ、鬼退治、いや鬼TAIZIにGOしてくる!」

「無理やり横文字にしなくてもいいんじゃないかな。」

「オレは怒ってるぜアニキ!そもそも民間企業に年貢を取り立てる権利はないぜ!ああいうのは国または市町村自治体が管理するもんだぜ!とりあえず今まで不当に納めていた年貢は鬼を倒して取り返した後、管理者及び納税した方々と交渉の元、なるべくうちに多く謝礼が入るようにするぜ!」

「すごいなぁ、世の中の流れを知り損得を踏まえつつ収益を出そうとしてるよピーチくん。」

「たしかに、私たちに比べたら金の知識はすごいわ、うん。」


ピーチ太郎は早速、鬼がどのような存在なのか理解する事にしました。

「今はお金の知識より鬼の知識じゃね?アネキ、鬼ってどんな奴らなの?」

「えっとねぇ、背丈は最低でも2メートル以上あって、強面で筋骨隆々、牙と角が生えてて大きな金棒を担いでるわね。」

「うわ気持ちわる、化け物じゃん。」

「あんたも似たようなもんでしょ。」


ピーチ太郎はその性格から鬼退治をとても楽観的に考えていました。

「まぁ大きくても楽勝楽勝!もう包丁でスパッといけるからスパッと!」

「ピーチくん、鬼は力が強くて丸太を素手で握り潰せるらしいよ。」

「そんなの、包丁でスパッと、、、。」

「そういえば金棒で殴られたら体の原型なくなるらしいわね。」

「それは、包丁でスパッと、、、。」

「鬼の本気の咆哮は鼓膜を破るともいわれてるよ。」

「いや、だから、包丁でスパッと出来るもん!!」

「包丁をそんなに信頼しちゃダメでしょ!あくまで調理器具だから!」


その後兄妹は少ないお金を出し合ってピーチ太郎に食料やテントなど、旅の道具を買ってあげました。

「ワオ!これだけあれば2年野宿出来るぜ!」

「2年は無理だよ〜。でも本当に行くの?今なら引き返せるよ。」

「そうよ、別に無理しなくてもいいのよ。金さえ払えば鬼なんて何もして来ないんだから。」

「嫌だ、鬼ヶ島行って鬼を倒してくる。倒した謝礼でハンドクリームを買うんだい!」

「いや、貧乏でもそれくらい買ってあげるわよ。100均ショップで売ってんじゃない?」

「嫌なの!もっと上質なやつを買うんだぜ!」

「あんたならスマホとか欲しがると思ったのに、なんでハンドクリームなのよ?」

「だって、アニキもアネキもバイトで手がボロボロだぜ。毎日赤切れは痛々しいぜ!だからまずはハンドクリームなんだぜ!」

やたら軽くても優しいピーチ太郎でした。

「(ピーチくん、、、!僕らのことをそんなに、、、!)」

「(ピーチ、いいやつじゃん、、、!)」

「なんで2人とも泣いてんだぜ?さては玉ねぎ切りすぎだな?」

「「((この状況でどうつっこめと?))」」 

ピーチ太郎のイマイチなボケに対応できない兄妹でした。


兄妹はまずピーチ太郎を守るための防具をつけてあげました。

「ワオ!ジャパニーズアーマーは重いYO!」

「これは甲冑っていうんだよピーチくん。」

次に兄妹は武器をピーチ太郎に選ばせました。

「村の人たちが持ち寄ってくれたんだ。刀に槍に薙刀、手裏剣や鎖鎌もあるよ!」

「ピーチ、これ見てよ!火縄銃よ火縄銃!」

ピーチ太郎はイマイチ反応できないようでした。

「どうしたのピーチくん?」

「いや、スマホのある世界にしてはちょっと原始的、、、。」

「だめだよピーチくん、ボケキャラがそういうところに気づいちゃ。」


とりあえず全部持って行くことにしたピーチ太郎は最後に兄弟からきび団子を貰いました。

「ほら、僕らが丹精込めて作ったきびだんごだよ。」

「えー、シュークリームがいいぜアニキ〜。」

「コラ、アニキと私が一生懸命作ったのよ。そんなこと言わないの。」

「感性が渋すぎるぜ!せめてカヌレとかパンナコッタ、生キャラメルあたりがいいぜ。」

「あんたもそこそこ渋いチョイスしてると思うんだけどな。」


ピーチ太郎が文句を言うのでお家にあったフルーツの缶詰も持たせてあげました。

「あ、ピーチくん、桃の缶詰もいる?」

「いやアニキ、それ、共食いですからー!!」

「(自分が桃である自覚はちゃんとあるんだなぁ。)」


ピーチ太郎は旅の支度を終えて兄妹としばしのお別れの時が近づきました。

「ピーチくんがいなくなると寂しくなるよ。」

「ピーチ、怪我には気をつけてね。本当にひとりで大丈夫?」

「人生なんとかなるっしょ!ただアネキ、大変だ。」

「ん、どうしたの?」

「このまま旅立つと特別オチがない、、、。」

「そこはあんたが気にする所じゃないの!オチがないのは作者のせいだから!」

「でも、なんとかしないと落ち着かないんだぜ。」

「わかったわよ、ならきび団子を食べて感想を一言!これで締めるのよ!」

「ナイスだアネキ!食レポは得意だぜ!」

ピーチ太郎は着地点を見つけるためにきび団子を食レポすることにしました。ピーチ太郎はきび団子を食べて一言。

「砂糖が足りねぇ。」

「二度と食レポすんじゃねぇ!」


こうしてピーチ太郎は兄弟に見送られながら旅立って行きました。

「じゃなあ2人とも!帰りにハイパーヨーヨー買ってくるぜ!」

「どうせなら3人で遊べるもの買ってきなさーい!」

ピーチ太郎はどんどんと遠くへ行き、鬼ヶ島へ旅立って行きました。そして兄妹はある事に気が付きました。

「これさ、僕らもついて行った方が良くなかった?」

「ごめん兄貴、盲点だったわ。」


ピーチ太郎は鬼ヶ島へ向けて旅立ちました。これからどんな苦難が彼を待ち受けているのでしょうか。次の展開は、またいつか。

「レッツゴー!鬼TAIZI!」 


ピーチ太郎〜つづく?〜

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