ランタン行進
寒い寒い冬の夜に欲しいものはなんだろう。
暖かいココア、ふかふかのベッド、薪のいっぱい入る暖炉もいい。
だけど僕が持っているのはランタンたったひとつ。
ココアを買うお金も、ベッドや暖炉のあるお家もないんだ。
あるのは僅かなマッチとこのランタン。
毎日火をつけては消えての繰り返し。
どんなに雪が降っていても寒くても、僕を守ってくれる唯一の灯火。
そんな小さな火が見れるのは後どれくらいだろう。
マッチの箱はもうすっからかん。
残りの火は今灯っているので最後。
これが消えれば僕を守るものは何もない。
いつか自分が冷たくなったらと思うと悲しくも楽になれるのかなって思ってる。
たった1人でランタン持って歩いている僕にそれでもなお、冬と雪ってやつは甘えさせてくれないんだ。
だけどその時、うっすらと見えた。
ちょうどすぐ目の前に、僕と同じくランタンを持ったやつがいる。
生まれも育ちもわかんない、わかるのはそいつも小さな灯のランタンを持ってる。
小さな灯でも合わせれば少しは大きくなるかなんて思っちゃって、そいつに声をかけてみようと思ったんだ。
だけどそいつとそいつのランタンはまだ遠くて、だけどちょっと走れば届きそうで、それでもほんのちっちゃな怖さってやつが邪魔をしてくるんだ。
そいつに嫌われたら、嫌がられたら、もしかしたら存在を否定されるかもしれない。
頭の中に嫌なものがいっぱい詰まってる。
自分の存在を守るよりも他人ってやつを優先しちゃったんだ。
きっかけが掴めなくていつも寒い思いばかり。
そんな時ふと勇気ってやつが足を早く動かしてくれた。
もちろん怖さってやつが離れてくれた訳じゃないけど、いつの間にか向こう側にいたやつの肩をポンと叩いて、淡いのない自己紹介をして、いつの間にか笑っていたんだ。
そして2人で歩いているとまたランタンを持った奴が向こうを歩いてる。
また同じように無責任な勇気ってやつが僕の背中を勝手に押してくるんだ。
気がついたら3人、4人と数が増えてって、小さい灯のついたランタンを持った奴らが冷たい空気をかき分けていく。
そういえばランタンの灯を大きくする為に声をかけたのに、僕はランタンの灯のことなんて忘れていたのさ。
マッチなんかなくても、オイルがなくても僕も皆んなのランタンが勝手に灯を強くしたんだ。
僕らは小さな灯しか持ってない。
恐怖を消すこともなく、自分を暖める事もない。
だけどもその小さな灯には特別な力があって、大きくもなって小さくても心が暖まるのさ。
そんな事言うとからかわれたり、漫画みたいな話をするなと怒られるけど、そんな事どうでも良くなってしまう。
例え時代遅れになろうと大切にしたい。
僕らは寒い冬の夜に勝てない弱虫。
勝てないけども負けもしない、僕らはランタンを持った同胞さ。
ひとりで越えられない冷たい闇を皆んなで明るく進むのさ。
暖かい朝と朝と春へ向かう為に僕らは集まった。
ランタン行進よ、灯し続けてどこまでも。
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