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荒くれロボのアックスダー

人の代わりにロボットが戦争に駆り出される時代。とある大陸に位置するロバス機械共和国とベイルド帝国の戦争は日々激化していた。今日も多くのロボットたちが倒れる中、ある1体だけは飛び交う銃弾をかいくぐり、縦横無尽に敵を切り裂いていた。ロバス軍のロボットたちは悲鳴をあげ、司令官ロボは声を荒げた。

「何事だ!前線が総崩れとはどういうことだ!!」

「大変です!アックスダーがBエリアに単機で突入した模様!進軍ルートから推測するに、もうすぐここへやってきます!!」

「アックスダー!?あの荒くれ傭兵め!ベイルド帝国に鞍替えしたのか!ええい臆するな、所詮旧式が1体!戦車と歩兵で防衛のフォーメーションだ!奴を見かけたら躊躇なく撃てぇ!」

「司令官!上です!!」

兵士が声をあげたとたん、上空から舞い降りた何かにより司令官ロボの首と胴体は離れ、それはへらへらと笑いながら周りのロバス兵も撃退していく。黄土色の大きなボディ、唯一輝きを放つのは右手の斧だけ。眼前の敵は荒々しい傷を残してスクラップになっていく。彼こそ荒くれロボのアックスダーである。

「オラオラ!死ぬ気で戦わねぇと斧で切っちまうぞ!」

アックスダーは逃げるロバス兵も容赦なく切り倒していく。その途中ロバス軍の戦車が1機、アックスダーに突進していくが彼はそれを斧の刃で受け止め、一撃で真っ二つに切り裂き大破させた。そしてアックスダーがまた別エリアに行こうとすると、先ほど彼が倒した司令官ロボが首だけで罵ってくる。

「裏切者の傭兵が!!この間までロバスの味方をしていたお前がなぜ、、、!」

アックスダーは落ちていた司令官ロボの首を持ち上げる。

「あぁ?至極簡単な話だぜコマンダー。ベイルドの方が高い金を払ってくれる。それだけだ。」

アックスダーは司令官ロボの頭を握りつぶし、また別のポイントに向かう。彼はその日、72体のロバス兵を亡き者にした。



ある日、アックスダーはベイルド帝国の基地にあるラルゴ将軍の指令室にて、たんまりと報酬をもらっていた。スーツケースに入れられた大量の札束を数えながらアックスダーはいつものようにへらへらしていた。

「前以上の報酬だな、うれしいねぇ。持つべきは人間のお友達だな。」

ラルゴ将軍もまた笑みを浮かべ喜んでいた。

「私もうれしいよ。ロバスに最初協力していた君がうちに来てくれるなんてな。」

「へへへ、奴らはケチだった。だから去った、シンプルな理由だろ。次もよろしくな、今度は100体くらいぶちのめしてやるからよ。」

アックスダーは報酬の入ったスーツケースを持って指令室を出ていく。ラルゴからその瞬間笑顔は消え、部下の若い兵士を呼びつけ酒を持ってこさせる。ラルゴはそれを自ら開けグラスに注いだだ。

「ああいうロボは半分好きになれんな。実力がありながら、品性が足りん。我々が人間だからそう感じるのか、それとも奴が特別なのか、、、。」

ラルゴは若い兵士にも酒を振る舞う。

「よろしいんですかラルゴ将軍?毎回高額の報酬を与えてしまって、、、。」

「国の金だ、私にダメージはないさ。それに、そろそろ計画を実行に移す時だ。あの下品なロボがどうなろうと知ったことではない。」

ラルゴは酒を飲み干し、窓の外から基地を見ていた。



アックスダーは翌日の昼、ベイルド領内にある町のガソリンスタンドでドラム缶1杯のガソリンを買いその場で飲み干していた。

「うめぇうめぇ。」

するとガソリンスタンドの店主が冷や汗をかきながらアックスダーに話しかける。

「あ、あんたぁ。今後もう、店に来ないでくれるかい?」

「あぁん?なんでだよ、他のロボットだって来てるじゃねぇか。」

「あ、あんたがいると、客足が減るんだよ、、、!この、、、!」

店主は新聞を投げつけるとそこには「アックスダー、ロバスを裏切る。」と特集があった。アックスダーはそれを見て、はいはいと言いながらガソリンスタンドを後にする。


アックスダーが町を歩くと住人たちはひそひそと彼を見ながら悪口を言う。

「あれが噂の、、、。」

「この間まで俺たちの敵だったのに。」

「嫌なロボットねぇ。早くどっかへ消えてくれないかしら。」

「全くですよ。どの面して歩いてるんだか、、、。」

アックスダーは聞こえなふりをしながらもピリピリしていた。

「(聞こえてるっつーの。戦場なら全員ぶちのめしてたな、、、。)」

さらに道中、アックスダーは捨てられたお手伝い用ロボットを見つける。彼は嫌われ者だが、使われるだけ使われてこのように捨てられるより、戦争に身を置く方が向いているといつも思っていた。アックスダーは捨てられたロボの前に立ち止まる。

「悪いな。お前のようにはなりたくねぇんだよ。死ぬなら、ごみ置き場じゃなくて戦場の方が気楽だ。」

アックスダーが再び歩くと、一匹の猫が通りかかる。アックスダーは猫が大の苦手、彼はいらいらして斧で猫を脅す。

「どいつもこいつも!切り刻んでやろうか!!」

するとアックスダーは後ろから小石を投げられる。

「猫さんいじめちゃダメなの!!」

アックスダーの後ろには小さな女の子。金髪に青い瞳、首にはベイルド帝国の紋章が入ったペンダントがかけられており、赤と白の服を着ていかにも裕福そうであった。しかしアックスダーは子供でも容赦はしない。彼は斧を少女に向ける。

「おいチビガキ。金持ちのようだが教育がなってねぇな。俺様を誰だっと思ってる?」

「知らない!」

「即答かよ。(なんだこいつ。俺にビビらないのか?)」

すると先ほどの猫が少女に歩み寄る。少女が頭をなでなでしてるとアックスダーは少し引いた声でしゃべる。

「うえぇ、お前猫に触れんのかよ。どこでも小便する奴らだぞ。」

少女は猫を持ち上げてアックスダーに近づける。

「かわいいもん!ロボットさんも持ってみる?」

「あ、いや、待て!近づけるな!悪かった!俺が悪かった!だから猫を近づけるなぁ!!!」


アックスダーはその後猫を何とか逃がし、少女にアイスクリームを奢り近くの公園で食べさせていた。戦闘ロボットと少女がベンチで並んでいるこの光景、アックスダーは見られたくないと思った。

「誰もいない公園でよかったぜ。おいチビガキ、、、。」

「チビガキじゃないもん、キャノンだもん!」

「うるせえ!それ食ったら家に帰れよ。どこの金持ちか知らんが、ひとりでいたら誘拐されちまうぞ。」

アイスクリームを食べ終えたキャノンは涙ぐんでいた。

「私、迷子、、、。」

「先言え!!この辺に家があるんじゃねぇのかよ!」

「旅行中で、パパとはぐれちゃった、、、。」

アックスダーはため息をつきながら近くの公衆電話に行こうとする。

「ったくこれだからガキは嫌いだ。そこで待ってろ、おまわりさんに連絡したらまたアイス買ってやるから、、、。おい聞いてるかガキ、、、。」

アックスダーが振り向くと黒いスーツを着た男たちがキャノンを誘拐し黒い車に無理やり押し込んでいた。そして車は走り去り、アックスダーはへらへらした。

「なんだよ。マジで誘拐されてやがんの!まぁ、俺様がこれ以上かかわる必要もないか、、、。はぁ、、、。」



黒い車の中でキャノンはひどく泣きわめく。中には黒い服の男たちが4人乗っており、運転手以外はキャノンを泣き止ませようとしていた。

「うぁぁああん!!パパ~!!!」

「キャノンちゃん泣かないでね~!お菓子ならいっぱいあるから~!」

「おい、そんなのより麻酔使って黙らせろ!気が散る!!」

「しかしアックスダーが近くにいるとは驚きだったな。まさか計画がバレてるんじゃ、、、!?」

「それより早くガキの荷物調べろ!何か情報があるはずだ、、、!」

すると黒い車の上部が一瞬だけ大きく揺れ、中にいた男たちは銃を手に取る。すると後部座席の横の窓の上からにゅっとアックスダーが顔を出す。

「よぉ、そのチビガキどうするつもりだ?」

「あ、アックスダーが来たぁ!!」

男たちは車の上部やアックスダーを発砲するが彼には効かず、運転手の男は町はずれの丘に車を移動し、彼らはアックスダーと対峙することにした。車を降り銃を構えると、どこからともなく舞い降りたアックスダーは男たちを切り刻んでいく。

「悪いなぁ!!そいつの親には、アイス代を請求しなきゃなんねぇからよぉ!!」

黒い服の男たちは悲鳴を上げる間もなく倒れ、アックスダーは車の中にいるキャノンを迎えに行く。

「おいチビガキ!終わったぞ、ほら、、、。」

アックスダーが車のドアを開けるとキャノンがさらに泣きわめく。

「いやだ!!離れて!!!」

キャノンは車の中にあった荷物をこれでもかとアックスダーに投げつける。

「おい!やめろって、なんでまた、、、。あぁ、そうか、、、。」

アックスダーは車のサイドミラーに写る自分の姿を見た。黄土色のボディと斧にはびっしりと鮮血がついており、周りには男たちの死体が残っていた。

「悪い、合図するまで車から出てくるなよ。本当、悪かったな、、、。」

彼はキャノンを車に残し男たちの為に墓を作り返り、血は丘の土を擦り付けて消していく。大体40分ほど経ち、アックスダーは車を開けるとキャノンはまだ泣いていた。しかしアックスダーは優しい声で呼びかける。

「もう大丈夫だ。怖いおじさんたちもロボットももういない、、、。もう、大丈夫だから、、、。」

キャノンが勇気を出して車を降りるとそこには血の一滴の色もなかった。安心したのか彼女はアックスダーの足にすがりつく。

「怖かった、、、!」

「そうだな、、、。」

夕方、車の中でキャノンは眠り、アックスダーは倒した男たちから集めていた遺品を外で見ていた。

「(こいつら、ベイルド帝国軍の兵士だったのか。なんで自国の住人なんかをさらう必要があるんだ?このガキ、ただの金持ちじゃねぇってことか、、、。何かを探していたようだがおそらく、、、。)」

アックスダーが窓からキャノンのつけているペンダントを見ていると、後ろから声をかけられる。

「貴様、ここで何をしている。」

アックスダーが振り向くとそこには警官が数名いた。

「お、ちょうどよかった!この子を保護してやってくれ!!」

警官たちは懐から電撃を帯びた大き目の警棒を出しアックスダーを滅多打ちにする。

「な、なにをする!!やめろ、なぜ、、、!」

「データの反応があると思ったらここだったか、、、。こいつも連れていく!」

アックスダーは訳も分からぬまま電撃によるショックで倒れ停止した。



アックスダーは電子手錠をかけられ横たわりながら目覚めた。そこは月明かりで大きく照らされた古い倉庫の中であった。

「この感じ。使われなくなった軍事用倉庫か!
おい、誰かいないのか!!さっきのポリ公をぶちのめしてやる!おい!」

「焦ることはない。そんなに叫ばなくても、私たちはここにいる。」

月明りの向こうから見慣れた顔が部下を引き連れやってくる。

「お前は、ラルゴ将軍、、、!」

「私の部下を殺したのはお前か。今回の一件といい、ロバスを裏切ったことといい、貴様にもう居場所はなさそうだな。余計なことに手を出す、いや斧を出すとこうなるのだ。」

ラルゴの部下が手と口を縛られ涙を流し震えるキャノンを連れてくる。アックスダーはそれを見て怒る。

「お前ら!目的はペンダントだろ!ガキは離してやれ!!」

「君も感づいてはいたようだな。しかし何が入っているかまでは知らんだろう。この中にはロボ用の高性能AIデータが入っている。ロバスが欲しがっている貴重なものだ。そして我々が今持っているベイルド帝国の新型機種、その名もブレイドルだ。これら2つを持って我々はロバスに亡命する。君と同じ理由さアックスダー、彼らの方が金払いがいい。」

「へ、それを正規軍所属であるお前らがやると滑稽だな、、、。」

ラルゴはキャノンのペンダントを引きちぎり、部下が運んできたブレイドルの前に立つ。ブレイドルは赤いボディで両手が剣になっており、サイズはアックスダーとほぼ同じだった。

「何度でも言うがいいアックスダー。しかし、ロバスへ献上する前に動作の確認もしておきたい。どういう因果か知らないが、君がこの子の側にいたのはある意味好都合だった。さぁブレイドル、テストの時間だ。アックスダーを八つ裂きにするのだ!」

ラルゴがペンダントから取り出したチップをブレイドルの頭部に入れると、ブレイドルは起動し眼前で倒れているアックスダーを標的にして動き始める。アックスダーは慌てながら立ち上がり手錠を外そうとする。

「お前ら卑怯だぞ!テストなら付き合ってやるからこれ外せコラァ!!」

「ハハハ!お笑いだなぁアックスダー。君にしては面白い命乞いだ。歴戦の戦士ならそれくらい何とかしてみたらどうだ!」

ブレイドルはアックスダーの体を切ろうとするが、アックスダーはそれを利用し手錠を切らせそのまま斧で応戦する。

「何が新型だ!生まれて2~3分の赤ん坊に俺様が負けるかぁ!」

アックスダーはブレイドルの足を切ろうとするが、ブレイドルは回避し逆にアックスダーのボディを軽く切り裂いた。

「馬鹿な!俺のボディが!!」

「どうしたアックスダー!ピストルもランチャーも効かない君が怖気ついたか!ブレイドル、ミサイル攻撃だ!!」

ブレイドルのすね部分が開き、無数の小型ミサイルがアックスダーを襲う。アックスダーは何発か斧で切るものの、大半が直撃する。あたり一面が煙に包まれる中、ラルゴとその部下たちは笑っていた。しかしそのスキを見計らい、キャノンはアックスダーのもとへ駆け寄る。

「んんん!んん!!」

アックスダーはヨロヨロしながらも口と手を縛られたキャノンの縄を斧で軽く切り解いた。

「何言ってるかわかんねぇよ。」

「あっちゃん!逃げて!」

「あっちゃんってお前、変な名前で呼びやがって、、、。逃げるわけねえだろ、、、。俺様はな、大人にもガキにも容赦しねぇ男なんだよ。おい赤ロボ、そろそろ終わりにしようぜ!!」

ラルゴはとどめをさすようブレイドルに命令する。

「性能は十分に分かった!小娘ともども死ぬがいい、アックスダー!ブレイドル、とどめだ!」

ブレイドルは2本の剣でアックスダーを襲うが、アックスダーは立ち上がり斧でブレイドルの左腕を切り落とし頭突きをして地面に倒した。頭突きの威力は凄まじく、倒れたブレイドルの地面が軽くひび割れていた。

「これが、経験の違いってやつだ、、、。」

ラルゴたちは慌てふためいていた。

「起きろブレイドル!!ああ、なんてことだ!ロバスになんて言えばよいのだ!!」

アックスダーはラルゴたちの方を向き斧を構えながら近づいていく。

「さて、ガキを怖がらせるのはもう十分だ。お前らがこの先、亡命しようが死のうが知ったこっちゃねぇ!今回は勘弁してやるからとっとと、、、!」

「あっちゃん後ろ!」

キャノンが呼びかけたと同時に、アックスダーの脇腹はいつの間にか立ち上がったブレイドルに貫かれた。アックスダーが膝をついて倒れたとたん、ブレイドルは彼を横に蹴り飛ばした。それを見たラルゴはほっとしていた。

「や、やったぞ。形はどうあれアックスダーを倒したぞ!片腕を失っても優秀であることには変わりない!ロバスに運ぶぞ!さぁはや、、、!」

ブレイドルは何を思ったのかラルゴの体を切りつけた。ラルゴは何も言えぬまま倒れ、他の部下達も逃げ惑う。しかしそれを執拗なまでに追い詰める姿は戦場のアックスダーとどこか似ていた。弱りながらもそれを見ていた彼はちょっとした悲しみを覚えた。

「何でこうなったか知らないが、側から見るとこれも滑稽だな。」

凄惨な光景を見たキャノンは怯え、ブレイドルはラルゴの部下を始末した後、彼女の方へ向かっていく。

「嫌だ、私、、、。」

アックスダーは立ち上がりブレイドルにしがみつくが、ブレイドルの剣は何度も彼のボディに刺さっていく。

「あっちゃん!!死んじゃうよ!!」

「これが戦場というなら本望!チビガキ、邪魔だから向こうへ行きやがれぇ!」

アックスダーはブレイドルにお返しと言わんばかりに左腕を剣で切断され、さらに斧と剣の鍔迫り合いになる。最初は両者互角であったが、不意打ちによるダメージのせいかアックスダーがどんどんと不利になっていく。するとキャノンは倉庫に落ちていたゴミを投げつける。

「あっちゃんから離れて!!離れて!」

「よせ!こいつを刺激するな!」

ブレイドルはアックスダーを蹴り飛ばし、再びキャノンに襲い掛かろうとする。

「きゃーー!!」

アックスダーは落ちていたブレイドルの手を蹴り飛ばした。

「足技がお前だけのもんだと思うなぁ!!」

蹴った腕は剣付きのままブレイドルの胴体を貫いた。そしてアックスダーは後ろからブレイドルを斧で真っ二つにする。ブレイドルの体は切られた果物のようにゴロンと倒れ、アックスダーもそのまま倒れた。キャノンは泣きながら彼の方へ駆け寄る。

「あっちゃん!起きて、あっちゃん!」

「ぎ、ギリギリ大丈夫だ、、、。心配かけたな、もう終わったぞ、、、。さぁ、パパを探そう、きっと、心配してるはず、、、。」

その時である、ボロボロになりながらも立ち上がったラルゴがロケットランチャーをアックスダーに向けていた。アックスダーもそれに気づいたが、キャノンと回避するのは無理と悟った。

「アックスダー、お前は、生かしてなるものかぁ!」

「ヤベェ!離れろ!」

アックスダーは力いっぱいにキャノンを隣に跳ね飛ばした。その瞬間アックスダーの破損したボディにロケットランチャーが当たり、小さな爆発が彼を襲った。そして声も出さぬまま、アックスダーは倒れた。見ていたキャノンはひたすら叫んだ。

「あっちゃん!!あっちゃん!!」

「ふははは!アックスダーもこれで終わりだ!っああ!」

ラルゴが笑った瞬間、彼は何者かに撃たれた。気がつけば倉庫内はベイルド軍に囲まれていた。辛くも息を吹き返したアックスダーは殺されたラルゴと彼を殺した人物を見た。長い金髪で美しい顔立ちをした将校。アックスダーも知っている人物である。

「た、確か、、、。ベイルド軍将軍の1人、アルファス、、、。なぜここに、、、。」

「パパ!!」

キャノンがアルファスに駆け寄るとアックスダーはホッとした。

「よ、良かったな。パパが迎えに、、、。待て、何でここがわかった?騒ぎだけでなぜ、、、?まさかお前、、、。」

アルファスはため息をついてアックスダーと話し始める。

「アックスダー、我々の計画を少し面倒にしてくれたな。ラルゴ将軍達がロバスに亡命しようとしたのは知っている。だから娘が高性能データを持っていると偽情報を流しブレイドルを強襲用データと共にロバスへ勝手に運んでもらう予定だったのだ。」

「何言ってんだ、、、。じゃあお前、自分の娘を囮に、、、?旅行中に誘拐される事を前提で迷子にさせたのか!!」

「その通り。それから強襲用データは最初こそ正常に動くが、ロバスという言葉に反応すると暴走を引き起こすようにプログラムされていたのだ。ロバスの実験場をめちゃくちゃにしてやろうと思っていたが、お前のせいでそれもなくなった。しかし、ブレイドル級でも旧式のロボットに倒されるというかなり貴重なデータは手に入った。今後のロボット開発に役立てる、感謝しよう。さぁ帰るぞキャノン、、、。」

キャノンは小さいが故に話の内容は理解出来なかったが、アルファスを止めた。

「パパ、あっちゃん、あっちゃんを助けて!」

「キャノン。ガラクタに情を持っても得なんかしないぞ。」

「ガラクタじゃないもん!友達だもん!だから、、、。」

アルファスはキャノンの腕を強く握り彼女の頬を強く叩く。

「お前の仕事は終わった。これ以上は何も言うな。」

それを見たアックスダーは必死に立ち上がり激怒する。

「待てよ、、、!お前、娘を戦争の道具にして何様のつもりだ、、、!」

「兵器の貴様にどうこう言われる筋合いはない。傷に響くぞ、それ以上は動かない方が賢明、、、。」

「やかましい!死んだって言ってやる!戦争は、汚い大人だけでやれぇ!!」

アルファスは拳銃でアックスダーの損傷した部位に発砲し、アックスダーはゆっくりと倒れる。アルファスは鼻で彼を笑った。

「望み通りの結果だ、満足だろう。」

キャノンは父の手を振り解き、ボロボロになったアックスダーに歩み寄る。

「あっちゃん、、、。」

「俺たちが、最後まで怖いところ見せてごめんな。でもよ、お前これから、もっと酷いもの見るぜ、あんな親父のところにいたら、、、。それでも、生きてればいい事あるからよ、俺は、ここまで生きてやっと、友達が出来たから、、、。」

アックスダーの瞳は少しずつ輝きを失い、ピクリとも動かなくなった。アルファスはアックスダーから無理やりキャノンを離し連れて行く。残酷な父親に手を引かれながらキャノンは何度もアックスダーを呼んだが、返事はなかった。やがて思考しか動かせなくなった彼が思う事は、思ったよりもあっさりしていた。

嫌われ者の兵器に友達が出来たんだ、充分な人生だったじゃねえか。ただ、もう少し長くて、も、、、。

アックスダーは、大人を嫌いでも純粋な子どもは好きだったのかもしれない。それが事実かはどうか誰もわからないが、彼は自分の行った事に対して一切悔いる事なく、自身の存在としては贅沢な願いを抱え、月明かりの下で静音となった。



、、、起きて、あっちゃん。、、、あっちゃん!



アックスダーは長い眠りからゆっくりと目覚めた。アックスダーが目覚めた場所は機械がたくさん置いてある木造の古屋のような場所だった。起きあがろうとするが、彼は体が上手く動かせなかった。

「お、お何だ!いつものように動かないぞ!」

「ダメよ急に動いちゃ!パーツとか色々違うから!」

アックスダーが近くの鏡を見るとボディや腕のパーツが変わっていた。

「お、斧がねぇ!ボディも新しくなってるし!手も指がついてる!おお、、、。」

「ごめんね!頑張ってパーツ探したんだけど、あっちゃん元から旧式だったからあんまり似たようなの見つからなくて、でも自作してオリジナルに寄せた部分もあるのよ!気に入らなかったらまた取り替えてあげるから!」

アックスダーはさっきから慌てた声をしている女性を見る。

「誰だお前?」

長い金髪に青い瞳、長身ながら幼さがあり、機械の義足を付けている。アックスダーは気づいた。

「キャノンか。」

キャノンは涙目になりながらうなづく。

「俺の体、とっといてくれたのか。」

「あの事件の後、あっちゃんオークションに出されたり廃品業者に売られたりで、探すの大変だったよ、、、。」

「あれから何年経ったんだ?」

「11年、、、。」

「戦争はどっちが?」

「ロバスもベイルドもすぐに滅んだ。今はレイアラス王国が仕切ってる。でも、ロボットと人が共存してるいい国よ!あなたを探すの手伝ってくれたの!」

「親父さんは?」

「空襲で死んじゃった。私も片足無くなっちゃって、義足をつけてるの。あなたの言う通り、戦争で酷いもの一杯見てきたけど、いい事もあったよ!私、また友達に会えたの!!」

「、、、。そうか、俺もだ、、、。」

荒くれロボが目覚めた世界は平和で友のいる世界だった。彼らがその後の人生全てが幸せになったかは誰も知らないが、誰よりも笑顔だったのは言うまでもない。

〜エピローグ〜

アックスダーがキャノンと暮らし始めて数日が経ったある日、重要な事を思い出す。

「そういえばさ、俺の斧ってどこにあるんだ?」

「確か直す時危ないから倉庫にしまってあったはず!出して来ようか!?」

「んん?いいや、今度で。ガソリンくれ。」



荒くれロボのアックスダー 〜完〜

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NFTお迎え記念として書かせていただきました!
いかがでしたか?普段には無いレベルで長めに書きました。いつかテレビアニメ1本出来たらなーなんて思っちゃったりしてます♪

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