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エッセイ:大ちゃんは○○である42

設定は、どうすることもできない状況をイメージすることにした。
もし、自分がどうすることもできない状況に陥ったとして
何かできることはないかと考えた時、
がむしゃらに叫んで、ほんの少しだけでもその状況を打破しようとするんじゃないだろうか?
頭の中でそんな状況を描いていって、描いた絵の中に自分を放り込んでみた。
こんな感じ。こんな感じ?
与えられた一分間はあっという間だった。
手を叩く音が聞こえたかと思うと
「はい、そこまで。一人づつやってもらうよー。」
と竹村の声が響いた。
「じゃあ、トップバッターは、、大門。
いってみようか。」
皆の視線が一斉に僕の方に向く。
「はい!」
向けられた視線には様々な感情が込められているような気がした。
好奇・敵意・興味etcといったところか。
ただ、一番でよかった。やるなら一番が一番いい。
技術どうこうの問題じゃない。
イメージを躊躇なく表現して、出しきるだけだ。
きっと窓ガラスも割れるに違いない。割ってやろうじゃないの。
「はい、じゃあいくよー。
よーーい、スタート!」
僕は一点を睨み付けるように見つめ、
身体中から全てを放出せんとむき出しの感情で叫んだ。
「うわぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!、ぃあーーーーーーーーーーーーーーっ!!!やめろーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!」
エネルギーを出しきると、その場に膝をつきへたりこんだ
肩で息をして、鼻水を拭った。
周りの反応はどうだったのかは、よく覚えていない。
先生からはこれといった言葉はかけてもらえず
「はい。OK。じゃあ、次、、高橋。」といった具合に、これといった評価をもらうこともなかった。
『えっ…何もなし?全然だめ?』なんて思ったりもしたが
すでに次の者が準備に入っていた為、仕方なく場所を譲り戻った。
「助けてくれぇ----------っ!」
「腹減った------------っ!」
「なんであの時あんなこと言ったのよ-----っ!」
「うわぁ---!漏れちゃう漏れちゃう!
うんこ漏れちゃうよ----------っ!」等々、皆が思い思いの設定で窓ガラスに向かって絶叫していく時間が過ぎていく。
竹村はその様子を、表情一つ変えることなく見つめているだけだ。

つづく

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