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エッセイ:大ちゃんは○○である37

プロダクションのレッスンは半年間のスケジュールになっており、
メニューとしては、演技レッスンとボイストレーニングがメインだった。
オーディションに合格したといっても、この半年間のレッスンの中でさらに脱落者が出るという。
半年後、事務所サイドに難しいと判断された者は
所属には至らず、去らなければならない。
合格者として集められたのは、僕を含め12人だったと思うが
あくまでこの12人はレッスンスタートの段階においては仮合格という立場だった。
初回は演技レッスンからのスタートとなっていて、
フロアに等間隔に並べられたパイプ椅子に
僕達12人の合格者は順番に座った。
男性6名。女性6名。
講師の到着を待つ間、誰一人として口を開く者はおらず、どの顔も緊張感と高揚感に満ち溢れていた。
びっくりするぐらいのイケメン君もいれば、個性的と表現するにふさわしい者、まだ10代半ばぐらいなんじゃないかと思われるような
幼さを残した少女もいて、パッと見ではあるが中々バラエティに富んだ面々が揃っていた。
掛け時計の秒針の音が聞こえるんじゃないかというぐらいの静寂。
全員が揃ってから15分ぐらい経った頃だろうか、入り口のドアノブがガチャっと音を立て
講師の男が入ってきた。

つづく

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