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教科書の中の手塚治虫

今回は「手塚治虫と教科書」というテーマでお話させていただきます。


突然ですが皆さんが学生だった頃の教科書に「手塚治虫」の名前は
載っていたでしょうか。

ボクが小学生の頃はたしか道徳の教科書だったと思うのですが
「手塚治虫が映画バンビを感動して100回以上見てアニメを作った」という記事が載せられていました。


マンガ自体の記載はなく手塚治虫がアニメを作るまでのエピソードが
紹介されていたような記憶があります

みんなが「へぇ~」って言ってる横でボクは「そんなん今更!」って顔で聞いていましたけどね。

学校の先生が解説するコメントも的外れで
「なんも知らねぇなぁコイツ」
…なんて心の中で思ってたクソガキでした(笑)

イヤなガキですねほんと。

とまぁ昔は教科書と言えばガチガチの学習教材でしたので
そこにちょっとだけ描かれるアトムの挿絵だけでも興奮したものです。

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今はどうなっているんでしょう。
色々調べてみると
昔と比べて手塚治虫のエッセイ、自伝や伝記などが続々登場しているようですね。

今回はこちらのサイトを参考にご紹介いたします。

「手塚治虫を楽しむ」というブログ

ぜひご覧になってみてください。



まずは教科書にどのように掲載されているのか見てみましょう。

第一学習社の高校生『日本史A』
こちらでは『紙の砦』から一コマが転載されていて
戦時下の学徒勤労動員や大阪空襲の体験を中心とした記事

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自伝本『ぼくはマンガ家』からの引用もあるそうです。
清水書院の『日本史A』でも紹介されているみたいです。

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小学校の教科書では東京書籍の『新しい道徳[6年]』
東京書籍の『新編新しい国語[5年]』
光村図書の『道徳[5年]』
日本文教出版の『小学道徳[5年]生きる力』では
手塚治虫の人物伝が載っているみたいです

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東京書籍『新しい道徳[6年]』には
「まんがに命を 〜手塚治虫 日本のテレビアニメの生みの親」という文章が掲載されています。
どうして絵が動いているように見えるのだろうか?と
いう記事が載せられマンガについて解説されているようです。


いや~調べると結構載っているんですね、


元々マンガなんて「社会悪」と言われていたものが時代が経つにつれ
教育現場にここまで浸透してきているとは正直驚きです

ボクの記憶では昭和50年台くらいまでは「マンガを読むとアホになる」なんてことが叫ばれていました。
それがわずか数年のうちにここまで景色が変わってしまうとは
世の中の変化とは恐ろしいもんです。

今の若い世代の方からすると考えられないかもしれませんが
悪書追放と言って運動場でマンガが燃やされるなんて事もあったんですよ。
信じられます?

いやはや…時代の手のひら返しとはすごいもんです、ほんと。


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アニメにしたって日本初のTVアニメ「鉄腕アトム」が公開されると
「全然、絵が動かない」
「紙芝居みたい」
なんて全否定された時代もあるのに今じゃ日本のアニメは世界最高水準でジャパニメーションなんて呼ばれちゃって
大変なもんですよ、ほんとにね。


日本のマンガカルチャーがこれほどまでに大きく発展したのは
単純にマンガの面白さだけでなく
手塚先生が、非難、悪口、追放、差別、あらゆる苦難をも跳ね返し
夢に向かって描き続けてきたから今日があるということを忘れてほしくないですね。


話を戻しましょう。


その他は
東京書籍『新編新しい国語[5年]』『紙の砦』が3ページも掲載
伝記を読んで感想文を書く題材となっているようです。

日本文教出版の『小学道徳生きる力[5年]』では『マンガ家 手塚治虫』という文章が記載

これらも、戦争とはどんなものか?夢に向かって生きるとは?
どんな事を大切にするべきか?
などを問いかけているそうです。


最近では2014年大学入試センター試験「日本史B」では、
またもや『紙の砦』が出題されました
環境問題を取り上げた「ガラスの地球を救え」の文章と合わせ
「手塚治虫とその時代」と題した
第2次世界大戦末の日本の情勢について出題が
なんと計8問出題されたようです。

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8問ですよ。8問。合計23点分。
ずいぶん大きく取り上げられましたね。

センター試験も変わったもんです。



その他では
ちょっとデータが古いのですが
2011年に載った教科書を見てみますと

東京書籍「国語」(小学5年) 手塚治虫の伝記
教育出版「ひろがる言葉 小学国語」(小学5年下) ジャングル大帝
東京出版「算数」 小学4〜6年の教科書に『鉄腕アトム』
東京書籍 英語「中学英語 NEW HORIZON」『鉄腕アトム』
日本文教出版 「小学社会」(小学3年〜6年) 『鉄腕アトム』
日本文教出版 「公民 現代の社会」(中学) 『アトム今昔物語』
日本文教出版 「美術2・3」上・下 『鉄腕アトム』『火の鳥』
教育出版 「小学理科」 小学3〜6年 『鉄腕アトム』

が載っております。

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「紙の砦」のような自伝ではなく
鉄腕アトム、火の鳥といったマンガが掲載されているのは非常に興味深いことであります。

学力低下が社会的な問題として叫ばれる中、文部省や教育委員会が、学力を向上させる手段として教科書に興味をもってもらおうと闇雲に教育現場にマンガを持ち込んだわけではないと思うんですよね。


個人的な理由になりますが
ボクは手塚作品の「言葉」がとても教科書向きな気がするんです。

読んでいて非常にキレイだと思います。


なんていったらいいのかめちゃくちゃ汚い言葉もあるんですけど(笑)
文学的な香りがするんです。
言葉、マンガでいうセリフが美しい
言葉遣いが芸術的といいますか著者の文才の豊かさが表れています。
蓄積された教養の深さが言葉に宿っていますよね。

国語の時間に小説を朗読するように
手塚作品は小説に絵がついているようなイメージなので
鉄腕アトムのような娯楽作品であっても十分、子供たちには
学びに繋がる要素は多分に秘められていることと思います

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面白いから教科書に載るわけではない
かといってためになるから載るわけでもない。
難しすぎてもだめ
教科書に載せる定義というのはは存じ上げませんけど

少なくとも子供たちに興味をもってもらう
もしくは心に残るような作品を製作者はチョイスしているはずです


その観点からみた場合
手塚作品はとても教科書的なマンガなのかもしれない。

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手塚作品は
バカ笑いするほど面白いわけでもなく
スカっとする爽快感もない

だけど心をエグられるような読後感がある。
妙に考えさせられてしまう感覚。

答えを教える教育ではなく
物事を真理を読み解いてみたくなる感覚

どんな話だったのかはっきりと覚えていないけど
心の奥底でなんか気になるなぁっていう感覚…。
これこそが子供たちにとって必要なことなのかもしれません。

そう思うと手塚作品というのは
人間の普遍性を問う非常に教科書的なマンガであるのかもしれません。


そして作品だけでなく伝記としても
手塚治虫という人物はエピソード、業績という観点からみても申し分ありません。

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手塚先生の描くメッセージや仕事への熱意、生き方、偉大さ、憧れや尊敬、人物像、いづれにおいても高い水準にあります。

教科書に載せられている伝記の基本は、その功績と影響力
そして教育現場に求められていることとは
「逆境に負けず常に新しいことにチャレンジしよう」という流れのはずです

その観点から見ても
手塚治虫という人物像は非常に教科書的な人物像であると言えるのではないでしょうか。


おそらく今後、教科書に「手塚治虫」という名前が多く登場してくると
勝手に思っています(笑)
そこから少しでも興味を持ってくれる子供たちが増え
手塚治虫というカテゴリ全体が盛り上げっていければ
いいなぁと思っております。


他にもやなせたかし先生や藤子不二雄(両)先生
調べていないので分かりませんが他の巨匠と呼ばれる作家の方々のマンガも載っていることでしょう。
もしご存じでしたらぜひコメント頂ければ幸いです。

教科書なんて学生時代しか手に取らないので
色んな時代の教科書の感想なんかあると面白いなぁ…

最後までご覧くださりありがとうございます。


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