火の鳥まとめ【全エピソード解説】
今回は『火の鳥』総論として全エピソード一挙解説と
『火の鳥』の読むべき理由を解説していきます
手塚治虫の最高傑作とも呼び声高い本作は漫画の神様とよばれる作家の
代表作だけあって漫画を読む方であればもちろん
日本人なら一度は手に取って欲しい作品であります。
マクロからミクロへの超時空的世界観を描いた
手塚治虫の凄さが爆裂したマンガ
おそらく漫画史上最も壮大な物語であろう作品を読んでいない日本人のために今回の記事をご用意いたしました。
ぜひ最後までお付き合いください
それではいってみましょう。
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まず今回のテーマは3つ
①『火の鳥』をおすすめする理由
②全エピソードの一口解説
③『火の鳥』ってどんな漫画?
上記の3項目を解説します。
以前にも『火の鳥』とはどんな作品なのかの記事もありますので、
今回の補足としてご覧いただけますとより理解が深まるかと思います。
ぜひご覧になってみてください。
さてそれでは行きましょう。
①『火の鳥』をおすすめする理由とは
ズバリ!それはあなたが日本人だからです。
完全に偏った偏見丸出しのコメントではありますが
日本人であるなら読むべき漫画だと思います。
例えるなら
世界各国の猛者たちが集まる漫画世界選手権があったら
『火の鳥』は間違いなく日本代表に選ばれます。
その中でもスタメンでキャプテン候補です。
だったら読むでしょ。
国の威信をかけた一大決戦の最終最後に登場する総大将クラスの漫画です。
良くわかんないかも知れませんけど
そのくらいの漫画だってことです。
漫画好きでこれを読んでいないなんてあり得ません。
自身をマンガ好きと思っているなら必読。
こんなレジェンドを差し置いてマンガ好き語るべからず。
漫画としても素晴らしいし、
エンタメとしても素晴らしい
そして教養としても素晴らしいし、
義務教育に突っ込んで欲しいくらい
とにかくすごい作品なのは間違いありません。
人類の誕生から滅亡までを描いたバケモンみたいな作品で
作品全体を覆う終末感と
人間の想像を超える絶望感は
他を寄せ付けないケタ違いの凄まじい破壊力を持っています。
よくもまぁこんな漫画を描けたもんだと唸りますよ。マジで。
手塚先生って絶対にこめかみにUSB突っ込んで知識と教養をアップデートさせてんじゃないかって思えるくらいぶっ飛んだ作品です。
あとね、
本棚に並んでたらカッコイイ(笑)
本棚に並んでてカッコイイマンガって何ですか?
『火の鳥』でしょ。
ボクはぶっちぎりで『火の鳥』だと思います。
しかも映える!
ビジネス書の横にシレ~っと並んででも違和感ないし
女の子のおうちに行って本棚に『火の鳥』全巻あったらマジで惚れます。
一冊だけでも惚れますね。『火の鳥』の存在感ってハンパないですから。
とにかくおすすめする理由として
日本人として生まれたならこの漫画を
母国語で読める幸せをぜひ味わって欲しいと思います。
これ一択です。
…さて前半の偏った能書きはこれくらいにして本題行きましょう。
②『火の鳥』全エピソード一口解説。
『火の鳥』とは全12編あり
全部読むことですべてが繋がっていると認識できる作品でありますが
どこから読んでも楽しめる漫画になっています。
なのでこの記事を読んでご自身の面白そうだなと思うエピソードから読んでもらって全然構いません。
今回は連載順にご紹介していきますが
おすすめの読み方や、どんな流れになっているかなどを知りたい方は下記の「読み方ガイド」を参考にしてみてください
(ちなみにですがギリシャローマ編などは含んでおりません)
ではスタートです!
【黎明編】
記念すべき『火の鳥』第一作目
時代は邪馬台国の日本
手塚版日本書紀であり永遠の命を巡る人間たちの業の物語
『火の鳥』の開幕編です
【未来編】
続いて2作目、舞台は一変して3404年
そして2作目にして衝撃の『火の鳥』の最終回が描かれた問題作。
全エピソードの中でも最も人気が高く気が遠くなるくらいの時間経過を描いたエピソードはコスモゾーンという独自の概念が飛び出した手塚治虫の力技が迸る傑作で火の鳥の生命観を語る上で最も重要なエピソードです。
スペクタルすぎて気が狂います
【ヤマト編】
舞台は古墳時代、『火の鳥』の中で最もシンプルでギャグタッチな作品
限りある命をどう使うのか?「自分はどう生きるか」を問いかけてきます。
誰よりも幸せに生きていくという「命の使い方」を、気づきを与えてくれるエピソードです
【宇宙編】
舞台は西暦2577年
オープニングの導入としては『火の鳥』随一の完成度。
冒頭10ページほどで胸ぐら掴まれたようにグイっと物語に引き寄せられます。サスペンスとミステリー要素もありラストの展開も秀逸
SFものやサスペンス好きなら絶対に読んで損しない傑作。
そして実験的、革新的ともいえるコマ割りは一見の価値ありです。
漫画好きを語るならぜひともこのコマ割りは体験しておくべきことをオススメします
【鳳凰編】
『火の鳥』の最高傑作に位置づけられる
手塚治虫の最高到達点ともいえる日本漫画の金字塔的作品です。
舞台は奈良時代、『火の鳥』と言えばコレと言われるくらいのシンボル的な作品でこの短い作品の中に『火の鳥』の神髄と手塚治虫の生命観が高次元で融合され凝縮されたエッセンスがパンパンに詰まっています。
『火の鳥』を知る上でマストで押さえておきたいエピソードです。
【復活編】
舞台は西暦2482年、
SFマンガの最高到達点ではないかと思えるほどに完成度の高い作品
人類とAIとの在り方、そしてAIとの恋愛について語られており
その存在と溶け込んでいく一体感が説かれる衝撃と感動間違いなしの傑作。圧倒的な伏線回収劇が盛り込まれているのも特徴。
【羽衣編】
舞台は平安時代 全エピソードの中でも最も短い短編形式の『火の鳥』で
定点漫画でもあり、唯一前エピソードからも孤立しているという特殊な物語になっている曰く作
【望郷編】
世界観と設定という意味では一番衝撃かも知れません。
人類の種の存族について究極の選択を迫られる倫理観のぶっ飛んだ傑作
場合によっては鬱になるかもしれない危険性すらはらんでいる感性を揺さぶるエピソードです。
人類の在り方を問うラストシーンは必見です。
【乱世編】
舞台は平安時代、
平清盛、源義経で有名なあの平家物語を軸にストーリーが展開していき
火の鳥を求めて永遠の命を巡る英雄たちの業の物語
時代の権力者たちが求める理想の先には一体何があるのか?
史実を織り交ぜた長編歴史大作。
【生命編】
舞台は2155年、人間のクローンを作ってハンターに殺させる「人間狩り」をするというカオスな世界観を描いた問題作。
設定は未来ながら驚くほど現代的なテーマ性を持っており「マスコミの狂気」をシニカルに描写しています。行き過ぎた資本主義の末路をも感じさせる刺激的なエピソードはぜひ21世紀の今こそ読んで欲しい作品
【異形編】
舞台は戦国室町時代
30年後の自分に殺され続けるという無限ループ地獄という設定
死んではまた生まれ変わる繰り返しの「生きる」過酷さを書き綴った火の鳥
手塚版ドストエフスキーの「罪と罰」です
【太陽編】
宗教戦争というデリケートなテーマを扱った晩年の傑作
7世紀と21世紀を交互に描き
正義を振りかざす者同士の戦争や侵略戦争の愚かさを描いたドラマは
1300年という時を超えて人類の在り方を問う重厚なドラマになっています。
大人が読んでもより深い世界へハマり込んでしまうというハイブリッドな設定はもはや児童マンガの枠を超えています。
『火の鳥』屈指のエピソードのひとつ。
…というわけでさっと全エピソード解説でした。
如何でしたでしょうか。
面白そうだと思った興味のあるものから順にお手に取って
後ですべてが繋がる快感を味わってみてください。
どちらかと言えば瞬発力のある漫画じゃないので
一部殺傷能力の高いスパスパのやつもあることにはありますが(笑)
全体を通してこそ見えてくる面白さがハンパじゃないので
ぜひ全エピソードに触れてみて欲しいと思います。
そして一度読まれた方も今一度読んでみてください。
子供のころに見るのと大人になってから見るのでは
その表情が全く違うことに驚かされると思います。
これはほんとマジです。
こんな事描いてたの?
とびっくりすると思いますよ。
何度読んでも新しい発見がある、
再読に耐えうるというのも
『火の鳥』の持つ大きな魅力のひとつです
きっと読むたびに新しい発見があろうかと思いますので
ぜひこれを機会に再読することをおすすめします
③『火の鳥』ってどんな漫画?
説明なんていりません。
これはもう四の五の言わずただただ心奪われる瞬間を体験してほしい。
マンガというフィルターを通して「生と死」の世界を描く
手塚治虫のド変態漫画を先入観なしに読む。
これが一番です。
今は、説明的というか答えのある漫画が多いので
多くの読者が誤読の余地がない習慣を持ってしまっていると思います。
じゃあ説明すんなよって感じですが
幅広い方々に『火の鳥』を知ってもらう意味で記事を書いていますので
内容をあれこれ説明するより認知活動の意味合いが強いです。
知ってもらって先入観なしで読んでもらう、これがベストです。
理解してもらいたいなんてこれっぽっちも思っていません。
そもそも『火の鳥』という作品は理解不能ですから。
漫画の神様、児童マンガ家という良い子ちゃんの皮を被り
毒をまき散らす変態作家が描き散らかしたマンガを
そう簡単に理解なんぞできるはずもありません。
でもそれがいいんです。
そもそも『火の鳥』という作品には
「両義性」が含まれておりそれを楽しむマンガです。
「両義性」とは
「一つの事柄が相反する二つの意味を持っていること」
対立する二つの解釈が、どちらにも成立しちゃうという
これぞまさに火の鳥的解釈。
どちらにも正解も不正解もない
どこから見てもその考えは成立していて答えは一つではないという
故に『火の鳥』って永遠に満たされない価値観に
振り回されちゃうんですよね(笑)
これは決して難解な作品の方が良いと言ってるわけではありませんが
読みやすさばかりを追求してしまうと
何も考えなくても頭に入ってくるようになって
思考力や発想力が低下してしまいます。
でもそれって本来マンガの持つ面白さを奪っていると思うんですよね。
作者の意図を超えて発想する自由こそ
読者の特権だと思うので
誤読はあって然るべきだと思っています。
解釈はひとつではない。
どこまで理解できているかなんてのも関係ありません
正解も不正解もありません。
あえて大別するなら火の鳥を「読んだ」か「読んでいない」かだけ。
読んだ人にしか訪れない自分だけの価値観
ぜひご自身の揺れる解釈、
揺れる価値観を『火の鳥』で味わってほしいと思います。
そして『火の鳥』の特徴として全作品で異なる設定、
異なるドラマというのが挙げられます。
どれが良いとか悪いではなく完全に好みがあると思います。
でもそれで問題ありません。
属性の違うものが混ざり合う危うさというのも楽しみのひとつです。
宇宙すら生き物であるというぶっちぎった生命観であったり
目を背けたくなるくらい倫理観がぶっ飛んでいたり
破壊的な描写も数多いですが
そのどれもが奇妙な世界観の中で繋がっていきます。
どのエピソードから読んでもいいのですが
部分的に読んだのではなかなか全体像が見えにくく
作品そのものの真価に気づきにくいのは事実です。
一気に読むことでその真価が炸裂する漫画になっているので
ぜひその真価に到達する前に諦めてしまうのはもったいないです
漫画なのでどうしたって好き嫌い、向き不向きはあると思います。
ですけど『火の鳥』は一辺倒な漫画じゃないんで
歴史好きなら歴史ものだけ読めばいいしSFだけでもOKです。
そのちょっとした繋がりから『火の鳥』の世界観が広がっていきますので
是非、次の作品も読んでみて下さい。
これはもう読んで体験していただくしかないんですけど…
参考までに以前にリスナーさんが選ぶ
「火の鳥ベストエピソードランキング」の記事があります。
『火の鳥』好きの方々から頂いたコメントを元に集計したものになっておりますのでリアルガチなランキングがご覧いただけますのでおすすめです。
という訳で今回は火の鳥総論としまして
全エピソード解説と火の鳥の読むべき理由をお伝えしました。
「生とは何か?死とは何か?」という人類不滅のテーマを
漫画家人生の大部分を費やして描いたまさにライフワーク的作品
多くの読者を惹きつけて止まない火の鳥の魅力の一端を
ぜひその目で体験してほしいと思います。