サンタさんからの「お返事」
所要があって郵便局に行った際、気になるパンフレットを見つけた。
「サンタさんからの手紙」である。
なんと、フィンランドのサンタクロース中央郵便局から届くらしい。締切は11月25日まで。ちょっと欲しいな……と思ってしまった。国際便だからなのか、1800円というなかなかいいお値段だが、同封はがきにサンタさんへメッセージを書いて送ると、さらに翌年の夏にサマーカードが届くというおまけ付きである。ちょっと、ワクワクしないだろうか。
大人向け、英字文タイプもあるし、良いかもな……とちょっと本気で考えていると、ある思い出が蘇ってきた。サンタさんからのお手紙ならぬ、「お返事」である。
それは、いつかのクリスマスイヴのこと。小学生……何年生だったかな。私は6年生までサンタさんが来ていたので、6年間も誤差が出てしまう。まあ何年生でも関係ない話なので、雰囲気的に4年生(仮)にしておこう。
毎年もらってばかりでは何だか申し訳ないので、感謝の手紙を書こうと思い至った。返事が欲しいという邪な気持ちもあったし、日本語だったら悲しいな……という、夢を追い続けたい複雑な子ども心だった。サンタさんなら日本語くらい使えるかもしれないが、幼い頃から日本語ペラペラのサンタさんにはいまいち喜べず、全世界に公認サンタクロースがいるということを納得できた後も、「そうは言っても、ほんとのサンタさんはフィンランドに住む、あのおじいさん一人だけだ」という気持ちは強かった。
そんなわけで、返事がもらえるのか、だとしたらどんな返事か……期待と不安を抱きながら渾身の一作を完成させたのだった。それは、自分がイメージするサンタさんの家やプレゼント工場などを描いた数ページの本。はっきり言って、超忙しいサンタさんがその場で読める長さではない。なのに返事まで寄越せとは良い度胸だが、当時はそんなことを思いつくに至らず、年に一回のコンタクトに賭ける気持ちのみで突っ走ったのである。「見てよ! こんなに描いたんだから!」くらい思っていたかもしれない。嗚呼……。
そしてクリスマスイヴ当日。寝室に靴下と手紙をセッティングし、緊張の面持ちで床に入った。いつもよりは眠れないが、なんだかんだで結局寝るのである。
いつもより少しだけ長い夜を経て、朝が来た。まずは靴下付近をチェック。
プレゼント、発見! よし!
そして、手紙を置いた場所をチェック。
私が書いた手紙、発見! えっっ
そう、明らかに私の自信作なのだ。サンタさん、持って帰ってくれなかった……。せめて読んでくれたのかな……。
プレゼントは嬉しいものの、悲しさが漂う朝となってしまった。しかし、サンタさんは行ってしまったので、自分で手紙を回収するしかない。そうして手に取ったとき、何かが違うことに気がついた。
一番後ろ(裏表紙)に、ピンク色のギフト用リボンが貼り付けてあったのである。
サンタさんは文字で語りかけてはくれなかった。しかし、ちゃんと読んでくれて、微笑みを浮かべて小さなリボンを付けたに違いない。少なくとも私はそう思ったし、今もそう思っている。
あの時の喜びやくすぐったさを上回る、サンタさんとの交流はもう滅多に無いんじゃないか。改めて記憶を掘り起こして、そう思った。もちろん思い出補正もあるだろう。しかし、それならそれで良い。どちらにせよ心の中で大事にするだけである。
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