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詩・ショートショート

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想像の世界を主にまとめています
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#物語

「オーロラ・ブックストア」 あらすじ

新卒3年目の「俺」は、流れ作業のような日々に嫌気がさしていた。そんなある日の帰り道、見覚えのない書店を発見する。そこはちょっと変わっていて、専用の腕時計が自分の本の好みを学習し、手に取るだけで振動で知らせてくれるらしい。そしてゆくゆくは、触らずとも本が勝手に光るという。 職場の同僚に話を聞くと、光輝く「運命的な出会い」があったという。出会いに飢えていた俺は本気で通い出すが……。 本編↓↓

起き抜けのモーニング 【ショートショート】

目覚ましの電子音が、頭上で鳴り響いた。 布団から右手を出し、ノールックでボタンを押す。全く起きる気がないときの押しかた……というわけでもなく、スヌーズを発動させすぎて癖になってしまっただけだ。といっても、今はもう1度寝るんだけど。 布団を頭まですっぽりと被ろうと、左手もちょこんと出して掛け布団の端を引っ張り上げる。そのとき、自分の目を疑った。白いはずのカバーが、オレンジ色に見えたからである。 一度、目を閉じてみる。そして開いてみた。オレンジ色である。今度は天井をしばらく

クリスマスの夜に【ショートショート】

クリスマスイヴの夜。21時。 足早にベッドへ滑り込む。本当はまだまだ夜ふかしするはずだったけど、もうどうでもいい。外界と遮断するかのように掛け布団を頭まですっぽりと被り、電気を消した。 何回か寝返りを打ちつつ、やっとうとうとしてきたところで、小さな物音が聞こえてきた。足音のようなものがゆっくりと、だが徐々に大きくなり、すぐ近くでピタリと止まった。直後、ゴトンという音がして、「バカッ」というささやき声。 この時点ですっかり目は覚めていたけど、目を開けるのは怖い。もしも泥棒

「クリスマスの夜に」あらすじ

クリスマスイヴの夜、まゆみは心にわだかまりを抱えたままベッドに入った。時刻はまだ21時。もっと夜更かしするつもりだったが、もうふて寝するしかなかったのだ。 そんな彼女の前に、信じられない訪問者が現れる。「これは、夢?」戸惑いながらも彼らと心を通わせていくまゆみに、ささやかなクリスマスの奇跡が起こる。

ガチャガチャ・ガチャ 【ショートショート】

週末、私はとあるガチャガチャコーナーの前で腕を組んでいた。 ここは、町に端っこにある商業施設。昔は平日も週末も関係なく人が入っていたようだが、巨大モールができてからは一気にさびれてしまった。 テナントが撤退した空間を埋めるべく設置されたガチャガチャコーナーで、以前から探していた某映画シリーズのマグネットを発見した。意気揚々と100円硬貨を3枚投入口に滑らせ、レバーを回す。 しかし、一向に出てくる気配がない。1度コインを戻し、再び入れ直して回してみるも、結果は同じ。中が減

天使ごっこ 【約1000字のお話】

今日は、ミキちゃんのお誕生日パーティー。 マユちゃん、ナナちゃん、アキちゃんが招待され、ごちそうがいっぱいのテーブルを囲んでいます。 その中央には、丸い不思議な機械が置いてあります。 「ミキちゃん、これなあに?」マユちゃんが聞きました。 「わたあめが作れるんだよ。お誕生日プレゼントにもらったの!」ミキちゃんがにっこり笑って答えました。 「わたあめが作れるの!? ナナ、わたあめ大好き!」ナナちゃんが目を輝かせます。 そのとき、ミキちゃんのお母さんがケーキを持って入って

推しテレビ 【ショートショート】

私は、やや緊張の面持ちで家電量販店のドアをくぐった。なぜなら、テレビを買うという使命があるからである。 前日の夜、急にテレビがつかなくなった。説明書とテレビそれぞれとにらめっこした結果、絶望的な状況であることがわかった。しかし翌日の夜にどうしても見たい番組がある。ということで翌日、超特急で貯金をおろし、開店直後の家電量販店を訪れることにしたのである。 無知で乗り込むのもよくないかと、一応ネットで「テレビ おすすめ」と調べてみた。しかし、液晶と有機EL、4K対応と4Kチュー

新しいフライパン 【ショートショート】

「ああ、やっぱりだめか」 コンロ前で溜息をつく。 目の前にはフライパン。その中で片栗粉をまとっていたはずの鶏肉は身ぐるみ剥がされ、一方のフライパンはその衣を順調に焦げつかせている。 しばらく前から異変には気づいていたものの、油の量を増やしたり、焦げつく部分を避けて炒めたり、焦げつきそうなメニューを諦めたりしながら、今日までやってきた。しかし、その間にも小さなストレスは積み上がり、遂に限界のときを迎えた。固まった片栗粉が具材の一部となったのを見て、私はこのフライパンとの別れ

Vache et Oeuf 【ショートショート】

秋晴れが爽やかな日曜日の午後、私は珍しく街に繰り出していた。 週末はいつも家でネットかゲームか、といった生活を送っている私にはこの時点で快挙なのに、街に出るきっかけが美術館なんだから自分でも信じられない。まあ、友人から「今週末までなのに、行けなくなったから!」と譲り受けただけなのだが。 通勤路とは別方向なので、どこもかしこも私の目には新鮮に映る。懐かしいと思える店もあったが、知らない店のほうが多いかもしれない……今後はもう少し外に出ないとな。 ***** とそこに、サ

路線バスに乗って 【約1000字のお話】

人も車もいない、休日の朝。 空き地の前にある、錆び付いたバス停にいるのは私だけ。 右手には線香やライター、135ml缶のビールが入った鞄。左手には仏花を2束抱え、ぼんやり突っ立ていた。 昨日夜更かししすぎたからか、睡魔がすごい。しかし降りるのは終点だ。最悪寝てしまっても大丈夫だろう。 ******* バスが到着し、整理券を取って席を探す。しかしこのとき、車内の異様な空気に気づいた。 まず、この時間帯ではありえないくらい混んでいる、というか満席だ。そしてなにより、老若

四次元カード 【約1000字のお話】

いつもと変わらない、平日の夜だった いつものように出勤し、いつものようにレジ交代をし いつものように混雑のピークを切り抜けた バイトを始めて3ヶ月 仕事も大学との両立も慣れてきた このあとはのんびりとした時間が流れるだけ…… ***** 「ちょっといい?」 60代くらいのおば……お客さんが話しかけてきた 「はい、どうされましたか」 「あのね、これが、シール貼ってるのに 割引されてなかったんだけど」 レシートを見せてもらうと、確かにすじこが定価になっている 「申

カバン革命 【約1000字のお話】

テレビに映るスクランブル交差点 四方八方に歩く人々の手には キャリーバッグが握られている ***** 観光や出張以外でも利用する人が増えている きっかけは、空前の旅行ブーム キャリーバッグの売れ行きが伸びると これを好機とみたファッション業界が参入 あらゆる世代に向けた個性豊かな商品が次々生み出され 雑誌では1週間コーデのポイントとして大活躍し 気づけば、誰もがキャリーバッグを持っていた キャラクターイラスト付きの小さなキャリーは それを引きずる子どもをさらに尊い存在に

買い物かごシアター 【約1000字のお話】

午後4時すぎ、予定通り スーパーに入店し、まずはチラシをチェックする この時間帯は夕飯の調達で客が多くなるから タイムセールもあるかもしれない 一通り眺めてから、カゴを手に取る すると中に、紙切れが入っているのが見えた 前の人のレシートだろうか、と出そうとしたとき その紙切れに、映像が流れ出したのである ***** 始めは影が動いているだけかと思った しかし、影は次第に濃く、色が付き 陳列棚であることがわかってきた オレは、思わず周囲をゆっくり見回した CM用テレ

発明好きな時計屋【約2000字のお話】

うちの近所には、小さな時計屋がある 住宅の1階が店になっていて 老舗感満載の個人店だ しかし前から、営業時間に疑問を抱いている ドアに書いてあるのは 【10:00~19:00 月曜定休】 なのに11時でもシャッターが閉まっていたり 月曜日でも開いていたりするのだ いくら自営業とはいえ、自由すぎでは…… そんなある日、腕時計が壊れた これを機会に、行ってみることにした ******* その日は仕事が長引き、到着したのは19時半 しかし、店の明かりはついたままだ 「すみ