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起き抜けのモーニング 【ショートショート】



目覚ましの電子音が、頭上で鳴り響いた。

布団から右手を出し、ノールックでボタンを押す。全く起きる気がないときの押しかた……というわけでもなく、スヌーズを発動させすぎて癖になってしまっただけだ。といっても、今はもう1度寝るんだけど。


布団を頭まですっぽりと被ろうと、左手もちょこんと出して掛け布団の端を引っ張り上げる。そのとき、自分の目を疑った。白いはずのカバーが、オレンジ色に見えたからである。



一度、目を閉じてみる。そして開いてみた。オレンジ色である。今度は天井をしばらく眺めてみる。起きたばかりで明暗の調整がまだうまくいっていないのかもしれない。1分くらいしたあと、再び布団を見た。オレンジ色である。もうどうしようもない。


逆に、じっくり確認してみる。すると、赤みがかったオレンジ一色に染まっていると思っていたカバーに、緑やピンクの小さな三角形が散らばっていることに気がついた。この配色、どこかで見たことがあるんだよな……チキンライスかな。



「ブブー!」



頭上から電子音が聞こえてきた。目覚まし時計の方向だが、そんな音は今まで聞いたことがない。もそもそとうつ伏せになって時計を手に取り、くるくる回してみたが、いつもの変わらない目覚まし時計だった。


なんで○×クイズの安っぽい不正解音がしたのか。再び仰向けになって、鳴る直前の状態に戻ってみることにした。えーと、何を考えていたんだっけ。この模様がチキンライスみたいだって話か。


やっぱりチキンライスに見えるんだよな。

「ブブー!」

チキンライスではないのか。

「……」

でもチキンラ

「ブブー」

食い気味で鳴らされてしまった。ということは、この模様が何かを当てろということらしい。



しかし、チキンライスでないのなら、もう1つ思い当たるものがある。別に声に出すわけでもないのに咳払いをしてから、賑やかになった布団カバーを見つめて答えた。



これは、ナポリタンではないですか?


「ピンポーン」


おお当たった、と思う間もなく、布団が熱くなってきた。

温度はぐんぐん上がっていく。そしていよいよ払いのけようとした頃、「チーン!」という音が部屋中に鳴り響き、布団の右側から冷気が流れ込んで一気に熱が引いていた。


さすがに怖くなって布団を吹き飛ばす勢いで飛び起きる。するとすぐ右横に、白いお皿に乗ったナポリタンが湯気を立てて置かれていた。赤みがかったオレンジ色に染まったパスタに、ピーマンとソーセージが顔を出している。

呆然としたままふと前を見ると、布団カバーは白に戻っていた。






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