バックパッカーズ・ゲストハウス⑱「露天風呂でハシャグ声」
これまでのあらすじ:田舎者である私のことを心配する旧友にラーメンを奢って貰ったあげく金まで借りた。【前回までのお話https://note.com/zariganisyobou/m/mf252844bf4f2】
翌日の晩に再び会う約束をして、龍とは新宿駅で別れた。彼は八王子に、私は池袋へ向った。私は気が弱いので、内見したらかなりの確立で、そのまま契約してしまうと思ったので、池袋か秋葉原、どちらのゲストハウスに住むにしても、先に外観だけでも見ておきたかった。
西口から出て、それらしき方向を目指して歩いた。番地を見る限り、かなり近いところまでは行ったはずだが、結局ピンポイントで、これだという建物を見つけられず、そのうちに飽きて、面倒くさくなって諦めた。どうせ龍が貸してくれた五万では、池袋か秋葉原のゲストハウスしか借りられず、それなら押し入れの池袋よりも、秋葉原の大型ゲストハウスの方に最初から気持ちが惹かれていた。
その日はブラブラと池袋をほっつき歩き、途中で翌日ゲストハウスを見せてもらうアポを入れたので、晩の内から秋葉原に移った。
JR秋葉原の電気街口を出ると、ピンク色の長いウィグを被り、少女のような服を着たオッサンが居た。まるで主のような顔をして、駅を出た直ぐのところにしゃがみ込んでいた。「ああ、ここはそういう街なんだな」と再認識しながら、私は、その日の宿を探した。
適当にネットカフェを見つけるつもりだったが、同じような料金設定でビデオ試写室を見つけた。田舎には試写室は無いので、どうせなら泊まったことのない方に入ろうと、試写室にナイトパックで入った。キャリーを引いているにもかかわらず、受付のオッサンに、「まずDVDを三枚選んで持ってこい」と説明されたので、大きな荷物を引きずりながら選んだ。もう少し身軽な時なら楽しい作業だったと思う。
フリードリンクがあったり、シャワーが浴びられたり、部屋によってはネットも繋がっているので、ネットカフェと試写室の違いは、大量のマンガ本が置いているか、エロDVDが置いているかぐらいしか無かった。
コーヒーを入れて、一服したあと、シャワーを浴びて彼女に連絡してと、前日の夜と同じように過ごした。五反田、池袋と知らない土地を歩き回って疲れていたせいか、割と直ぐに眠くなった。それでもせっかくなのでと、DVDはちゃんと再生した。露天風呂で女たちがキャッキャ、キャッキャいいながらハシャグ声を聞きながら寝落ちした。
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