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バックパッカーズ・ゲストハウス㊶「犯罪者カップルの女」

 前回のあらすじ:韓国語を巧みに操る紳士として振る舞っていたはずが、周りには変態として認知されていた。【これまでのお話https://note.com/zariganisyobou/m/mf252844bf4f2

 長期滞在の人間ばかりで、新たにゲストハウスへ入ってくる人と比べて、出ていく人は極端に少なかった。
 私が住んでいた四ヶ月間で、出ていったのは、結局一度もその姿を見ることがなかった、二階のレディースルームに住むメイドと、三階に住んでいた、「犯罪者」と疑われているカップルだけだった。

 このカップルと、ちゃんと会話をしたことはなかった。カップルについて記憶にあるのは、男の方がどこかへ出かけている間に、女が高田にぶち切れられていたこと。理由は、ベッドの脇に置いたゴミ袋に女が捨てたゴミが、ちゃんと分別されていなかったことだった。
 寝ていた私は、高田がカーテンの代わりに、画鋲で留めた布が目隠し代わりにぶら下げられたベッドに向って、

「出てきなさい! 聞こえてるでしょ!」と怒鳴る声で目を覚ました。
 しつこく、「出てきなさい!」「なんでこんなことも出来ないんだ!」というようなことを繰り返していた。

 ベッドから顔を出した私に気づいて高田は、「女が分別せずにゴミを捨てた瞬間を見た」と状況を説明した。そして、私がベッドの脇に置いていたゴミ袋を指して、

「君はちゃんと分別してるでしょ! それが、当たり前なんだ! そんなことも出来ない上に、こん中に隠れて謝ろうともしない! おかしいでしょ!」と怒り続けた。

 私のゴミ袋には、分別もなにも、コンビーフの缶しか捨てていなかった。

 寮長みたいな役割をしている中谷が、騒動を聞きつけて、様子を見に来た。中谷は苦々しい表情で高田を見ていた。あとから思えば、「またこいつかよ」と問題ばかり起こす高田に対しての気持ちが表れた顔だった。

 高田はベッドに立てこもった女よりも、私と中谷を相手にする方がいいと思ったのか、私たちに対して、自分が怒れる理由を説明し、その内大人しくなった。

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