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20061128 左のゴースト

 店頭のパソコン用のワンセグ電波受信機の広告を見ていたら何か変な感じがした。ワンセグはデジタル放送なのでアナログ地上波のような「ゴースト」が出ないと説明している。

 ワンセグ$${^{*1}}$$とは「ワンセグメント放送」の略で、携帯機器に搭載されている小さな画面用の映像を送出する。デジタル地上波$${^{*2}}$$は一つのチャンネルの周波数領域が13個に分割$${^{*3}}$$されているらしい。その一つ一つをセグメント$${^{*4}}$$と称し、その一つを使っているから「ワンセグメント」という。セグメントを沢山使えば大画面の情報を送ることができるが、一つしか使わないから小画面用である。

 テレビジョン放送の方式は、送信側の信号と受信側の信号とを同期させることが重要$${^{*5}}$$である。テレビジョン受像機の画面上の光の点$${^{*6}}$$は、画面左上から水平に、そして順番に下に向かって走査していく$${^{*7}}$$。この走査の仕方は放送局のテレビジョン撮影機の走査の仕方と同期が取れていないと上手く像が映し出されない。

 デジタル放送の場合でも基本的には従来と同じ$${^{*8}}$$だが、映像の中の一点一点の信号を放送局で一旦デジタル化して電波に乗せて$${^{*9}}$$それをデジタルテレビジョン受像機で受信してデジタル信号から元の画像の点に次々と再構築$${^{*10}}$$する。デジタル信号は「0」「1」$${^{*11}}$$の区別さえ解ればいいので、電波が空を飛んでいる間に多少の関係のない余分な信号が混ざっても影響が少ない。また信号の一部が欠落しても復元する$${^{*12}}$$ことができる。従ってデジタル放送は画像が乱れにくい。

 ゴースト$${^{*13}}$$は電波が余分なところで反射するので発生$${^{*14}}$$する。直接アンテナに到達する電波とビルなどに反射して到達する電波とが重なる$${^{*15}}$$ために起こる。反射してくる電波は余分な距離を走るために光の速度$${^{*16}}$$で到達するとは言え、ずれてしまう。

 テレビジョンの画面の上の点は左から右に走査するので、ビルで反射して到達が遅れた弱い信号が混ざれば右側に遅れた信号による像が現れる。つまり先回りする電波というのはあり得ないので「ゴーストは必ず右側$${^{*17}}$$」なのである。デジタル放送の場合は、余分な信号は除去されるからゴーストが出ない。ところが店頭に掲示してあった従来の放送例ではゴーストが左側に現れていた。この画像を制作した人はゴーストがどうして発生するのかよく理解していなかったのだろう。これが違和感の原因であった。

 調べてみると何と「左側のゴースト$${^{*18}}$$」もあるらしい。電波の強い地域で共同受信している場合$${^{*19}}$$に発生するようだ。それでは電波が強いと電波の速度が速くなるのか。

 共同受信なのでアンテナはないはずである。ところが電波が強いと信号がどこかから無理矢理入り込んでくるのだろう。共同受信の電波信号は各家庭に信号線で配信されている。放送局の送信アンテナから共同受信施設$${^{*20}}$$を通って配信される信号よりも、直接に送信アンテナから家庭のテレビジョン受像機に到達する信号の方が先になる。従ってゴーストは左側に出る。

*1 ワンセグとは - NE用語 - 日経エレクトロニクス - Tech-On!用語辞典
*2 ワンセグとは : 電子行政用語集 : HITACHI
*3 ISDB-Tとは - NE用語 - 日経エレクトロニクス - Tech-On!用語辞典
*4 seg・ment - goo 辞書
*5 テレビ技術史概要と関連資料調査
*6 Howstuffworks "How Television Works" The Cathode Ray Tube
*7 Howstuffworks "How Television Works" The Black-and-White TV Signal
*8 第6回 精緻なる現代の“ぱらぱらマンガ” -デジタル放送のからくり-|テクの雑学|TDK Techno Magazine
*9 データ伝送方式
*10 20000227 日本銀行券
*11 NHK dnhk データ放送
*12 誤り訂正の考え方
*13 よくあるご質問集 - テレビ受信障害の簡単な見分け方 - 東海総合通信局
*14 テレビ受信障害の見分け方
*15 ■ゴーストが発生する理由
*16 20991002 光の速度
*17 q02_1l.gif
*18 信越総合通信局-テレビ受信障害の画像と措置方法
*19 ゴースト2
*20 総務省関東総合通信局:共同受信施設での受信方法

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