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20050902 パン(2)

 「食パン」の語源は何か。パンは食べるものに決まっているのに、わざわざ「食」を付けてしまったのは何故か。以前、「食卓パン」の略ではないか$${^{*1}}$$と書いたことがある。改めて調べてみると色々説があることが判ってきた。消しパン$${^{*2}}$$と区別するためという誰が考えたのか間抜けな語源説は別として、もっともらしいのは「本食(ほんしょく)パン」「主食パン」の略ではないか、という説である。

 これらの言葉は「菓子パン」と区別するために出現したと考えられる。もともとパンと言えばあの四角いパンを指したのだが、間食用にパンの中に餡やクリームなどを入れた菓子パンが作られたので、それらと区別するため「本食パン」「主食パン」という言葉が出てきたのではないか、というのだ。所謂レトロニム$${^{*3}}$$である。

 「本食パン」「主食パン」が略されて「食パン」というのも何となくあやしい。なぜ「本パン」「主パン」ではないのか。「本食パン」「主食パン」と繰り返して言っているうちに「本」「主」の音が消えて「食パン」となったのだろうか。

 「菓子」に対して「主食」というのは納得がいく。一方、「本食」という言葉はあまり一般的ではないと思われる。もしかしたら本食パンというのは食パンに「本」を付けて「本当の食パン、本来の食パン」という意味で後に作った言葉ではないだろうか。何となくそんな気がしてきた。

 それでは「主食パン」はどうか。「間食パン」や「洋食パン$${^{*4}}$$」などという言葉が考えられる中、主食パンだけ「食パン」と略され、その言葉が生き残る可能性は高いのだろうか。確かに「しゅしょく」は少し発音しにくい。これが略されて「しょく」だけになる可能性はあるような気がする。

 菓子パンに対する言葉であることは間違いないだろう。菓子に対して「食事」「食糧」という意味を込めて「食パン」という言葉ができたのではないだろうか。即ち最初から「食パン」で、略でも何でもないのである。この方が語源としてすっきりする。

*1 19991222 パン
*2 トンボ鉛筆文具の歴史
*3 20011217 カメノテ(2)
*4 ヤマザキ「パンの街かど」|パンのミニ百科 日本生まれのパンは?

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