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20011217 カメノテ(2)

 先日、カメノテについて書いた$${^{*1}}$$。英語でカメノテをGoose Barnacleという。Goose Barnacleというのはカメノテだけではなくエボシガイ$${^{*2}}$$などミョウガガイ$${^{*3}}$$の仲間を指すらしい。ミョウガガイの由来は形が茗荷$${^{*4}}$$に似ているからであろう。中国語でもミョウガガイのことを「茗荷$${^{*5}}$$」というようだ。

 Goose Barnacleはカメノテだが、Barnacle Goose$${^{*6}}$$だとカオジロガンになる。実はbarnacleだけだと、「フジツボ」という意味の他に「カオジロガン」という意味もある。フジツボと雁とが英語では何故同じ名前になっているのだろうか。

 そのいわれはここに書いてあった$${^{*7}}$$。

 barnacleは13世紀の初頭から見られる言葉だが、そのころはフジツボの意味はなくカオジロガンの意味しかなかった。フジツボの意味で使われるようになるには300年以上かかっている。昔の人々は大抵の生き物が自然発生$${^{*8}}$$すると思っていた。カオジロガンも誰も雛を孵している様子を見たことがなかったので海岸沿いの木や朽ち木から発生すると考えた。一方、フジツボは海に漂う木にも沢山付着しているので、フジツボもカオジロガンと同様に直接木から発生すると考えてしまった。更にフジツボは蔓脚という羽毛のような足$${^{*9}}$$を出すので、フジツボの中に小さなカオジロガンがいると考えた。

 barnacleは元々はほカオジロガンを指す言葉であったが、時が経つにつれてフジツボの意味で使われるようになってしまったので、カオジロガンを表すのにわざわざgooseを付けてBarnacle Gooseと言うようになった。これは初期のレトロニムretronymの例である。

 ところでレトロニムとは「後追い命名語$${^{*10}}$$」とも言われる言葉で、本来詳しく説明する必要がなかった言葉に対して、後から発生した言葉と明確に区別するためにその元々の言葉に本来必要のなかった形容詞を付けて出来た新語のことをいう。

 例えばアコースティック・ギター$${^{*11}}$$はエレキ・ギター$${^{*12}}$$の出現によって作られた言葉である。本来ギターは電気を必要としない楽器なのでわざわざ「アコースティック」という修飾語は必要なかった。他に携帯電話に対して固定電話、emailに対してsnail mail$${^{*13}}$$(かたつむりのような郵便。普通郵便のこと)などがある。

*1 20011216 カメノテ
*2 平塚市博物館/エボシガイ
*3 今子浦で遊ぶ|香住 今子浦の旅館「いまご荘 櫂の詩」
*4 ミョウガ 茗荷 みょうが:旬の野菜百科
*5 动物篇(17)·节肢动物门·甲壳亚门(外) - 知乎
*6 Barnacle Goose (Branta leucopsis)
*7 barnacle. The American Heritage® Dictionary of the English Language: Fourth Edition. 2000.
*8 細菌学を創ったひとびと ~大発見にまつわるエピソード
*9 大きなフジツボ、ピコロコ | 東京ズーネット
*10 館淳一氏の造語 ノーマル雑学掲示板より
*11 古賀政男音楽博物館
*12 寺内タケシの部屋
*13 The End of Snail Mail?

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