見出し画像

20020604 機械式腕時計

 セイコー$${^{*1}}$$の腕時計で「機械式時計だが、精度が水晶振動子式$${^{*2}}$$並み」というものがあることを知った。「スプリングドライブ機構$${^{*3}}$$」と称している。スプリングとは「ぜんまい」のことである。

 機械式の時計の動力源はぜんまいに蓄えられたエネルギーだ。これによって針が動く。針を規則正しく動かすのは「テンプ$${^{*4}}$$」と呼ばれる機構である。テンプ$${^{*5}}$$とは回転往復運動をして柱時計の振り子と同じ役目をする。

 針で時刻を示す水晶振動子式の時計は水晶振動子の振動を基に規則的に動くモータを使って針を回転させている$${^{*6}}$$。その水晶振動子の振動とモータとの動力源は電池である。通常、電池は太陽電池やボタン電池が使われる。太陽電池を使えば電池の交換はなくていいのだが、意匠面で大きく制限が出てくる$${^{*7}}$$。腕時計は装飾品であるのでこれは不都合である。

 自動巻式でぜんまいを巻く代わりに小さな発電機を動かし蓄電池に充電する腕時計$${^{*8}}$$もある。

 件の時計はテンプの代わりに水晶振動子の振動を基にして歯車の動きを規則正しくする。水晶振動子を振動させるには電気が必要だが、その電気はぜんまいの力で発電機を回して得る。

 正確な時を刻む腕時計を作ろうとすればどうしても電気の力を借りないと駄目なのだろうか。時間の基準$${^{*9}}$$がセシウム原子の中の電気の素である電子に関係した現象を利用$${^{*10}}$$して決められているので仕方がないのかもしれない。時間の基準である原子時計$${^{*11}}$$と水晶振動子式時計とは原理や仕組みが全く違うが、電気を使っている点では共通している。

 よく考えてみると水晶振動子の振動は機械的な振動である。水晶に電圧を加えると水晶の形が少し歪む。逆に形を歪ませると電圧が発生する。この現象は圧電効果$${^{*12}}$$とよばれ、キュリー$${^{*13}}$$兄弟$${^{*14}}$$によって発見された。

 交番する電気を水晶に与えてやれば圧電効果により水晶が振動する。交番する電気の与え方を工夫してやれば$${^{*15}}$$その水晶の形状や大きさで決まる独特の周波数で振動する。実際に水晶が震えているのである。

 純然たる機械式時計に比べて正確な時を刻む水晶振動子式腕時計は電気で動いているとは言え、機械的な仕組みに頼っていることになる。

*1 20020313 YAMAHA
*2 20011020 揃いの腕時計
*3 セイコー,ぜんまい式で月差±15秒以内と高精度の腕時計(19991129)
*4 20020303 トゥールビヨン
*5 時計の心臓部 <テンプ>
*6 水晶式時計(クオーツ時計) | 時計の技術 | 日本時計協会 (JCWA)
*7 20010530 ELGINの時計
*8 20010407 粋な機構
*9 20020217 正確な時刻
*10 時間・周波数標準の現状と課題
*11 標準時報局(9)~DCF77
*12 水晶デバイス豆知識(1)
*13 20000629 キュリー一族
*14 Pierre Curie
*15 水晶デバイス豆知識(3)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?