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20020217 正確な時刻

 普通の時計の機能は時刻が判れば十分である。時計の使い方には二つあって、「時刻を知ること」と「時間を計ること」である。時間を計るのはある程度正確じゃないと困るが、時刻の場合は大体判ればいい。正確な時計がないと約束の時間に遅れたりするといわれるかも知れないが、十分余裕を持って行動すれば問題はない。

 正確な時刻を示すことが出来る時計とはどんな時計なのか。我が家にある電波時計$${^{*1}}$$は非常に正確な時計である。約30万年に1秒しか狂わないらしい。日本標準時の電波によって同期されているので原子時計と同じ正確さで時を刻む。ただ、1秒1秒が物凄い精度で刻まれている訳ではなく一日2回標準時刻電波で時間を校正しているだけなので、1日という時間の長さでは非常に正確に時を刻んでいるのである。

 この時計が30万年間壊れずに動く$${^{*2}}$$とはとても思えないが、動いたとしても1秒しか狂わないのだから凄いと言えば凄い。

 では一体正確な時刻というのは一体どこの誰が知っているのだろう。電波時計でも30万年の間に最大1秒狂ってしまう。それでは100万年間全く狂わない時計はどこにあるのか。そういう時計がないと30万年に何秒狂うというのが判らないはずである。

 質量$${^{*3}}$$であれば「国際キログラム原器」という金属の分銅があってこれの質量を1kgと決めている(※2002年の執筆当時。現在の1kg基準はプランク定数に基づくと定められている)。まさしくそれが1kgなのである。狂いはない。それを1kgとしたのだから狂うはずがない。長さ$${^{*4}}$$は1/299792458秒間$${^{*5}}$$に光が進む距離である。これもそう決めたので狂わない。光の速度は誰が測っても同じと言われているので狂うことはない。1秒の長さ$${^{*6}}$$もセシウム133原子の固有振動の9192631770回継続する時間である。これは重さや長さに比べて判りにくいが、これもそう決めたので狂わない。

 「時刻」に関しては物理的な普遍性はというのは特に問われないだろうから、今この瞬間を「0時0分0秒」と決めても物理的には何ら不都合は生じない。しかし日常生活や天文学上では不都合があるので時刻の決め方をはっきりさせておかないといけない。

 世界時$${^{*7}}$$というものがある。恒星の観測から地球の自転に基づく時刻の決め方$${^{*8}}$$である。平均太陽$${^{*9}}$$と呼ばれる仮想的な天体の位置から算出される世界時をUT0、これに極運動の補正を加えたのをUT1、更に地球の自転速度の季節変化の補正を加え年間を通じて平滑にした時刻をUT2と呼ぶらしい。

 一方、国際原子時$${^{*10}}$$というものがある。上に書いたセシウム原子に基づく時間で定義された時刻である。原子には日付や季節がないので時刻の始まりを決めなければならない。それは1958年1月1日0時0分0秒UT2である。

 世界時は地球から見た太陽の動き、即ち地球の自転が元になっている時刻なので永久不変ではなく長い年月が経てば変化してしまう。原子時はおそらく永久不変であろう。そのため世界時と原子時とのずれが生じてくる。そのずれを補正するようにした時刻が協定世界時$${^{*11}}$$である。時刻にはもともと物理的意味はないので、原子時が世界時に合わせる形になっている。原子時計を人間の時刻の基準にするとずれが蓄積して、昼なのに夜の時刻を示すことになりかねない。

 このずれを補正するのがうるう秒$${^{*12}}$$である。協定世界時の1秒間の長さは原子に基づくが、時刻の進行は不安定な地球の自転に合わせるという折衷案だ。季節によって変化する昼と夜をそれぞれ単に6等分する不定時法$${^{*13}}$$と呼ばれる昔の時刻の設定の仕方と何となく似ている。

 協定世界時が一般に使われる時刻の基準である。電波時計用の電波$${^{*14}}$$はこの協定世界時に合わせて送られてくるので、時刻のずれはないはずだ。

 しかし原子時による時刻の大元はフランスにある国際度量衡局の原子時$${^{*15}}$$である。日本で受信できる標準電波$${^{*16}}$$は独立行政法人 通信総合研究所 日本標準時グループ$${^{*17}}$$が国際度量衡局の原子時に合わせて発信しているので少しずれたりするのであろう。

*1 20020107 電波時計
*2 20010407 粋な機構
*3 質量
*4 長さ
*5 20000115 1メートル
*6 時間
*7 美星町 星のデータベース 世界時 UT,Universal Time
*8 基礎知識 - 1.時刻と時刻系
*9 美星町 星のデータベース 平均太陽
*10 美星町 星のデータベース 国際原子時 TAI:International Atomic Time
*11 美星町 星のデータベース 協定世界時 UTC,Coordinated Universal Time
*12 Information of Leap second
*13 美星町 星のデータベース 不定時法
*14 Type of Radio wave for Frequency and Time standard
*15 Time section: International Atomic Time
*16 Type of Radio wave for Frequency and Time standard
*17 apan Standard Time Group

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