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20020509 アラビア数字の訓読み

 「数字には訓読みしかない$${^{*1}}$$」という見方をしている人がweb上にいることを知って驚いた。「音読み」「訓読み」というのは漢字に対する言葉であって数字や記号や他の文字に対して使うのを初めて見た。すごい発想である。

 「音読み」とは漢字を中国での発音に基づいて日本で当てられた漢字の読み方で、「訓読み」はその漢字の意味から日本で独自に作られた読み方である。音読みも日本語としての読み方なので日本で独自に作られた読み方と言ってもいいかもしれない。

 導入されても日本で殆ど使われなかった漢字や日本語に元々なかった概念や物事を表す漢字には「訓読み」はない。逆に日本で作られた漢字$${^{*2}}$$には音読みがないはずだが、そのような和製漢字とされる「働」$${^{*3}}$$などは「ドウ」という音読みがある。「音読み」とは中国語風の漢字の読み方とすべきかもしれない。

 「音読み」はその漢字に割り振られた「音」を表し、「訓読み」はその漢字の意味を表すと考えれば、他の文字や記号にも「音読み」「訓読み」の考え方を当てはめることができる。

 ローマ字の「A」は英語で言えば「エイ」「ア」「アー」「オー」という音を表す。これは「音読み」と言っていいだろう。「A」という文字そのものは英語では「エイ」と称する。これは「A」という文字の名前であって「訓読み」ではない。ローマ字は表音文字である。アルファベット$${^{*4}}$$の第何文字目というような意味はあるが、ローマ字それ自体には意味がないので訓読みはないと言えよう。

 文字の歴史からすれば、物事を表す絵が次第に音だけを表す図形に変化して表音文字になったのだから「A」にも訓読みがあったはずだが、その「訓読み」を使うことはローマ字を使う言語にはないだろう。因みに「A」は元々母音を表す文字ではなかった$${^{*5}}$$。

 平仮名、片仮名、ハングル$${^{*6}}$$も音読みしかない。「あ」は「安」からできたが、「あ」を「安い」という意味として「やすい」と読むことはない。

 アラビア数字はどうか。物理量や貨幣などの単位を表す記号はどうであろうか。これらの文字や記号は物事の概念や意味を表すためにある。それらを組み合わせて、ある言語の単語の発音を示すために作られたのではない。従ってアラビア数字には「訓読み」しかない。

*1 「訓読み」の本家は「数字」にあり
*2 19991101 新しい漢字
*3 和製漢字の辞典:巻1(1~101)
*4 19991102 ローマ字
*5 20000522 母音
*6 20000803 巧克力

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