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20041228 ラジオメータ(4)

 ラジオメータを温めると羽根が回らなくなる$${^{*1}}$$。と思っていたらそうではなかった。私が行った実験では羽根の回転が止まったが、これは偶然だった。

 ラジオメータを温めると羽根は逆回転し出すのである。通常は「黒い面が押される方向$${^{*2}}$$」だが、逆回転というのは白い面が押される方向に回ると言うことである。そういった説明がしてあるページ$${^{*3}}$$を見つけた。1分くらいヒータで加熱してからヒーターを外すと逆回転するらしい。温風ヒータで温めた時には全く気付かなかった。

 早速やってみた。温風ヒータで温めた後、机の上に置いてみた。この時机の上の白熱電球の照明$${^{*4}}$$を消した。すると逆回転を始めるではないか。

 なぜか。ラジオメータの回転の原理は羽根の裏表の温度差$${^{*5}}$$である。温度差が大きいほど回転は速くなる。そして温度が高い面が押される方向に回転する。光をあてると黒い面は白い面よりも光をよく吸収するので黒い面の温度が高くなる。だから黒い面が押される方向に回転する。

 それでは逆回転するわけは、白い面の方が温度が高くなるからだろうか。そういうことになる。ヒータで温められた羽根はどんどん冷えていく。黒い面と白い面とでは冷え方が違う。黒い面は冷えやすいのである。一方、白い面は冷えにくい。

 光を吸収しやすい「黒色」は、熱を放射しやすい。熱の吸収しやすさと放射しやすさとは全く同じ$${^{*6}}$$であることをドイツの物理学者キルヒホッフ$${^{*7}}$$が発見した。

 なぜ熱の吸収しやすさと放射しやすさとは同じになるのか。ある温度の物体が真空中にあるとする。光をあてずに何もしないで放置しておけばその物体の温度はどんどん下がる。どんな物体でも放っておくと熱を光や電磁波として放射してしまう$${^{*8}}$$からである。もしこの物体の温度を一定にしようとすれば、放出した分の熱エネルギーを与えなければならない。光で与えると物体の表面で一部は反射してしまう。残りは吸収される。吸収された分はまた物体の表面から放射されないと物体の温度が上がってしまう。一方、温度が一定ならば放出されるエネルギーの量は一定$${^{*9}}$$である。従って温度が一定ならば、照射した光のうち反射されずに吸収された分だけ常に放出していることになる。これは光の照射がなくてもその温度の時は吸収した時と同じ量のエネルギーを放出していることになるので、吸収しやすさと放出しやすさは同じということになる。磨かれた金属表面は殆ど光を吸収しないので時間当たりの熱の放出量も少ない。

 白い面は光を吸収しにくいので熱も放出しにくい。これによって黒い面よりも温度が高いままになる。羽根の表裏に温度差ができて、白い面の方が温度が高くなるので逆回転する。前回の実験で羽根が止まったのは照明の光によって熱の出入りが上手く相殺されたのだろう。  

*1 20041227 ラジオメータ(3)
*2 Wundersames, Warmes, Lichtmühle
*3 メリーランド大学物理学講義用演示実験設備 I2-03.HTML
*4 20020512 バイオライト
*5 20041028 ラジオメータ
*6 HORIBA : 放射温度計プラザ
*7 Kirchhoff
*8 ?を!に...>エネルギー教室>エネルギーの法則
*9 Stefan-Boltzman's law

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