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20060821 切るなの根から金の生る木

 物の値段は何で決まるか。市場で決まる$${^{*1}}$$。市場に参加している人々の思惑で決まる。理論や物理現象では決まらない。そもそも「物の値段」という考え方は、物々交換が発端なので、値段を表している数値は最終的にはそれに見合った何か物や労働力と換えられる。そうでないと値段を付ける意味がない。

 ある商品の値段が百円であるとすると、それは百円分の米や塩など他の物と交換できるという意味である。それらが等価かどうかは交換をする当事者同士が決めることであって自然法則や科学理論ではない。これは市場での取引でも同じことである。

 それでは、もし錬金術$${^{*2}}$$機械という物が存在して、それに値段を付けるとなると一体どうなるか。錬金術機械とは簡単にエネルギーを殆ど使わずに卑金属から金や白金を作ることができる機械である。鉛や鉄くずを機械に入れると金や白金が出てくる。そんな機械に値段を付けるとしたらいくらになるか。実はこの話を進めるために考える機械は錬金術機械でなくても良い。米やパンを土や水から瞬時に合成する機械でもいい。しかし錬金術の方が夢があって景気のいい話になる。とにかく都合良く何か物ができてくればいい。自然界ではエネルギー保存則$${^{*3}}$$があるのでそんな都合のいいことは実現不可能だが、観念の世界だから全く問題ない。

 いくら高い値段でその錬金術機械を買ってもそれ以上の価値の金や白金を作り出すことができるので、値段が決まらないのか。現在、世界に出回っている金塊の総重量と同じ量の金が突然市場$${^{*4}}$$に出回ったら、理論的には金の値段は半分になるはずである。ごく単純に考えれば、いくら金を作っても市場に出回っている金塊の総量の価値は一定になっているのだから、機械はそれよりも高い値段になることはない。ただし将来の金の価格が高くなる可能性はあるのでそれを見込んで市場の金の総量の価値よりも高い値段で買う人がいるかも知れない。

 では、いつ何時その機械が壊れて使い物にならなくなるか判らないとしよう。購入して引き渡された瞬間に壊れてしまう場合もある。一旦壊れたら修理は不能とする。しかし上手く動けばいくらでも金塊が出てくる。こういう条件の機械の値段は果たしていくらになるだろう。前述のような何か屁理屈を付けてもっともらしい値段を付けることができるのだろうか。

*1 20031207 株の天気図
*2 20020612 錬金術
*3 第3節 エネルギーの変換と保存
*4 東京工業品取引所

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