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20090325 パン(3)

 食パンの語源が判った。「判った」と言ってもこの雑記草の趣旨$${^{*1}}$$を踏まえた表現だ。食パンの語源に付いては過去に記事にしたことがある$${^{*2}}$$。

 語源について色々な説がweb上には存在する$${^{*3}}$$。「本食パン」説、「主食パン」説、「消しパンとの区別$${^{*4}}$$」説、「フライパンとの区別」説。後半の二つは間抜け過ぎる語源説で説明する迄もないのだが、一応、それらの説が間違っていることだけははっきりさせておく。

 そもそもパンは食べる物なのに何故、消しゴム用のパンと区別しなければならないのか。それに万人がパンを食べる物としているのに対して消しゴムとしてパンを用いる$${^{*5}}$$人間はどれほどいるのか。考える時間ももったいないぐらい間抜けな俗説である。

 昭和十二年に出された三省堂の「婦人家庭百科辞典」を見ると「食パン」「フライパン」は掲載されているが、「パン」は食べる「パン」とパニックの語源$${^{*6}}$$となった牧羊神の「Pan$${^{*7}}$$」しか載っていない。当時、鍋を指す外来語として「パン」という言葉を使わなかった。従ってフライパンと区別するために「食パン」となったと言う説は明らかに間違いである。

 明治37年に出版された大槻文彦の「言海$${^{*8}}$$」でパンを調べると「饅頭ノ皮ヲ製スルガ如シ、西洋人、常食トス。アンナシマンヂユウ」とある。元々菓子との対比でパンを説明している。日本では最初、パンは菓子の部類だったのだろう。後に西洋人と同じように食事用にパンを食べるようになる。嗜好食物と主要食品との区別がなされ、前者を「菓子パン」後者を「食パン」と区別$${^{*9}}$$するようになった。「婦人家庭百科辞典」にはそのように区別されると既に書いてある。

 食パンは菓子パンの対語として出現したことになる。「食」は「菓子」の対義語として使われている。と言うことは「食事」「主食」「食品」の略と考えるのが自然ではないか。そもそも「本食」という言葉はないので「本食パン」が「食パン」の語源にはなり得ない。「本食パン」という言葉が存在するのなら「本食+パン」ではなくく、「本+食パン」ではないだろうか。それでは「本 食パン」とは何か。「本格食パン」「元祖食パン」ぐらいの意味だろう。

*1 雑記草
*2 20050902 パン(2)
*3 食パン 語源 - Google 検索
*4 教育トピックス_株式会社正進社
*5 第10回デッサンの道具について
*6 Online Etymology Dictionary
*7 Pan, Pan Sculpture, Maenad, Menead, Greek God, Greek Goddess, Greek Mythology, Ancient Greek Art
*8 20080118 半田の語源
*9 パン類品質表示基準

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