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20090502 放射能標識

 大抵、標識の図柄$${^{*1}}$$の由来は一目見て解る。化学薬品に貼付けてあるGHS$${^{*2}}$$の標識も、見れば何が由来かは一目瞭然だ。これは破裂の様子$${^{*3}}$$を、これは金属や手が腐食する様子$${^{*4}}$$、これはそのまま髑髏$${^{*5}}$$と言った具合だ。どこでも見かける非常出口の標識$${^{*6}}$$は、人が出口から外に出ようとしている様子を上手く表現している。この図案は日本人によって考案$${^{*7}}$$され、ISOの規格$${^{*8}}$$にもなっているらしい。この標識は海外でも売られている$${^{*9}}$$ので、世界中で見かけることができるのだろう。

 よく見かける割には、実はその由来がよく判らない物も中にはある。私はその標識を見慣れているので、それとすぐ解る。しかしこれを初めて見た人にとって、その図案が何を表しているのか今まで自分が送ってきた日常生活から全く類推ができない標識がある。それは放射能標識$${^{*10}}$$だ。この図案が何を表しているか覚えれば、類似の物はないので、放射能$${^{*11}}$$ということがすぐ解る。上に挙げた他の図案は、初めて見ても何を表しているか大抵は判る。ところが放射能標識の場合は、最初は誰かに放射能であることを教えてもらうか併記してある文字で知るしかない。周りに誰もいなくて、その説明書きが見た事もない文字や記号で書かれていたらもう何を表しているのか全く判らない。大変危険な物$${^{*12}}$$なので、二回目から判ればいい訳ではない。最初から判らないと全く意味がない。

 だがこれは仕方がない。日常生活において放射能は殆ど関わりがない。関わりがあっても時計などの夜光塗料$${^{*13}}$$か蛍光灯の点灯管$${^{*14}}$$程度だ。それに放射線は色もなく、臭いもない。光らないし風のような何らかの感触もない。生身の人間には全く感知できない。これでは絵にすることができない。概念を示すしかない。単なる概念は誰かに説明してもらわないと普通の人間には即座に理解できない。

 この放射能標識$${^{*15}}$$の由来は何か。中心の丸は原子を表しているらしい。そして周りの三つの扇は原子から放出される放射線である。この標識は、1946年のある日にカリフォルニア大学のバークレー放射線研究所$${^{*16}}$$の小集団によって発案された。発案と言ってもいたずら書き$${^{*17}}$$が発端らしい。いたずら書きとは言え、研究者の頭の中にある放射線の概念を具現化した図柄だからそれなりに説得力がある。それ故、定着したのかもしれない。

*1 20090501 黒目の魚
*2 GHS
*3 explos.gif
*4 acid_red.png
*5 skull.gif
*6 52030103020_010.gif
*7 U&C ユニバーサル・コミュニケーションデザインの認識と実践
*8 20020903 ISO
*9 M J Fire Protection - Safety Signs
*10 gen33.pdf 放射能標識(三葉マーク)
*11 ほうしゃ-のう 【放射能】の意味 国語辞典 - goo辞書
*12 20050321 車内への危険物持ち込み
*13 20021220 夜光塗料(2)
*14 Kurashino nakano Houshasen (p.52,53)
*15 石井マーク:オンライン商品カタログ:JIS放射能標識板
*16 Ernest Lawrence's Cyclotron 96602512.lowres.jpeg
*17 Origin of the Radiation Warning Sign (Trefoil)

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