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20090501 黒目の魚

 化学薬品を買うと説明書きの所に、時々、警告を示す図案が書かれている場合がある。いかにも西洋で考えられたと思われる図案$${^{*1}}$$だ。これら図案は、「GHS$${^{*2}}$$」と呼ばれる化学品の有害性や危険性を管理する世界的な仕組みのための標識で、各国が導入を進めている。これらの中$${^{*3}}$$で気に入っている物$${^{*4}}$$がある。

 水生環境有害性$${^{*5}}$$を示す標識だ。これ$${^{*6}}$$がその標識である。一目で環境に悪そうだと言う事が伝わってくる。非常に優れた図案だ。枯れ木のそばに汚れた川が流れており、その川には魚が腹を見せて浮いている。その薬品を川や土壌に流せば、川が汚染され樹木が枯れ魚が死ぬことを表している。

 特に気に入っているのは魚である。日本人が死んだ魚を図案化する場合、このようにはならないだろう。河川の汚染で魚がひっくり返るという所までは同じになるに違いない。しかしその魚の目は「●(黒丸)$${^{*6}}$$」ではなく、こんな感じに「×(バツ)」になる$${^{*7}}$$はずだ。日本では「×印」は駄目と言う意味があるが、西洋では特に駄目という意味は含まれておらず$${^{*8}}$$、単に「(項目を)選んだ」とか「(処置が)済んだ」と言った意味になる。

 そうかと言って西洋人の図案で調子が悪い事を示すのに目を「×」$${^{*9}}$$にしない訳ではない。しかしこの図案$${^{*6}}$$の魚の目は「●」になっている。これが逆に毒性を強く物語っている。「×」だと何となく目を閉じた印象がある。魚には瞼がない*10ので目を開けたまま死ぬのが普通だが、目を開けたまま死ぬと言うのがいかにも猛毒と言う感じを醸し出しているのだ。件の魚$${^{*6}}$$は口も開けている。この開いた口と黒目とで何か知らぬ間に調子が悪くなって死んでしまったという間抜けた雰囲気によって、薬品の不適切な扱いの恐ろしさを出している。

*1 skull.gif
*2 GHS
*3 UNECE - GHS pictograms
*4 20000323 マーク
*5 4.1章 水生環境有害性
*6 Aquatic-pollut-red.gif
*7 Aquatic-pollut-cross.gif
*8 Guide to voting
*9 Sad_mac.png
*10 魚 にはまぶたはないの、まばたきしないの

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