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20021220 夜光塗料(2)

 蓄光塗料$${^{*1}}$$に放射性物質を混ぜ合わせれば予め光を当てなくてもいつでも闇の中で光り続ける夜光塗料ができる。

 用いられる放射性物質はトリチウム、プロメチウム147$${^{*2}}$$、ラジウム$${^{*3}}$$である。かつてラジウムは夜光塗料に使われていたらしいが、危険性が高いと言うことからプロメチウム147を用いた夜光塗料が日本の企業で開発された$${^{*4}}$$。ついでトリチウムを用いた夜光塗料が別の日本の企業で開発された$${^{*5}}$$。

 プロメチウム$${^{*6}}$$は室温では固体だから塗料に混ぜることは簡単である。トリチウムは水素と同位体$${^{*7}}$$なので室温では気体である。これを塗料に混ぜ合わせていつまでも塗料の中に留まらせるのはかなり難しい様に思われる。そこで塗料の中の樹脂の分子を構成する水素の一部をトリチウムに入れ換えるのではないか、と言うようなことを先日書いた$${^{*1}}$$。

 そういう面倒なことをせずにトリチウムを気体のまま塗料に封じ込めれば、塗料の中に含まれる蛍光物質に多くの放射線を当てることができるだろう。トリチウムが増えれば放射線量が高まるのでそのままでは使えない。

 そこで気体のトリチウムを閉じこめることが出来て、しかも蛍光物質を光らせない余分な放射線を外に出さない様にする方法が必要になる。ガラス管の中にトリチウムガスを封じ込めれば、トリチウムから出るβ線という放射線$${^{*8}}$$はガラスを透過しにくい$${^{*9}}$$ので、放射線は外に漏れにくくなる。ガラス管の内側に蛍光物質を入れておけばトリチウムから出る放射線で蛍光物質が光り、その光はガラスを透過して見える。

 トリチウムガスと蛍光物質とをガラス管に封じ込めて、それを針や文字盤に組み込んだ腕時計$${^{*10}}$$がある。腕時計の針にも乗るような非常に細いガラス管の中にトリチウムが入っている。

 時計を使用している間はトリチウムは封じ込まれているのでいいが、これが何かの衝撃で壊れた時や廃棄する時は放射性物質が漏れ出す可能性がある。輸入代理店$${^{*11}}$$などは廃棄する腕時計の回収などをしているのだろうか。

*1 20021218 夜光塗料
*2 Kurashino nakano Houshasen (p.52,53)
*3 ラジウムのデータ
*4 コラム 第12回(特別編) 「夜光発達史~創業60周年を迎えて」- 根本特殊化学
*5 シンロイヒ
*6 プロメチウムのデータ
*7 安定同位体について
*8 Safety of Tritium
*9 放射線は物質を透過する
*10 ルミノックス腕時計サイト 機能説明
*11 ルミノックス腕時計サイト

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