見出し画像

20021218 夜光塗料

 腕時計や目覚まし時計の文字盤や針には暗くても時刻が判るように夜光塗料が使われる場合がある。夜光塗料$${^{*1}}$$には、光を当てておくと暗くなっても暫く光る蓄光塗料と光を当てなくても勝手に光っている発光塗料との二種類がある。

 夜光塗料の発光原理$${^{*2}}$$は発光する物質に光などでエネルギーを与えるとそのエネルギーを一時的に蓄えて、そのエネルギーを徐々に光として放出する特性に因る。徐々に放出する光は非常に弱いので周りが暗くないと徐々に放出される光は見えない。夜光塗料は暗くなると光る様に思えるが、実際はエネルギーを貰った先から光を放出しているので、暗くなると光るという訳ではない。

 蓄光塗料は周りの光からエネルギーを貰って光るが、発光塗料には自分で勝手にエネルギーを放出する物質を塗料に混ぜ込むことにより、周りのに光が無くても発光できるようしてある。発光する物質は蓄光塗料も発光塗料も同じ物である。勝手にエネルギーを放出する物質として放射性元素$${^{*3}}$$が用いられる。

 放射性元素は自発的に原子核が崩壊$${^{*4}}$$して放射線を放出する。放出する放射線はエネルギーを持っているのでこれが夜光塗料の発光物質にエネルギーを与え、発光するのである。

 放射性元素としてトリチウムがよく使われている。輸入腕時計の文字盤に「T SWISS MADE T」と小さく書いてあるのは夜光塗料にtritiumトリチウム$${^{*5}}$$が使われていることを示している。

 トリチウムは原子核に陽子一つと中性子二つが含まれている。化学的性質は原子核に陽子が一つだけ含まれる水素と全く同じである。従って化合物ではない元素の状態であれば常温で気体である。夜光塗料にトリチウムを混ぜるにはどうすればいいのだろう。気体のまま混ぜてもすぐ抜けてしまうだろう。

 塗料の成分$${^{*6}}$$は顔料、樹脂・油、可塑剤・添加剤、溶剤らしい。顔料は塗料の色彩を与える物で顔料に蓄光性のある物質$${^{*7}}$$を用いれば夜光塗料になる。トリチウムはどこに入るのだろう。トリチウムの化学的性質は水素と全く同じだから、本来は水素が結合しているところがトリチウムと入れ替わっていれば塗料にトリチウムが残ることになる。塗料が乾いた後に顔料を固定し膜を形成する樹脂には水素が多く含まれているので、この水素の一部がトリチウムと入れ替わっているものを使うのではないだろうか。

 トリチウムは放射線を放出するとヘリウムに変わる$${^{*8}}$$。ヘリウム$${^{*9}}$$は化合物を作りにくい性質があるので、樹脂中のトリチウムはヘリウムに変わると樹脂から抜け出てしまうのではないだろうか。そうなると樹脂の化学的性質も変化するような気がする。とはいっても樹脂は高分子$${^{*10}}$$だろうから水素の一部が飛んで消えても殆ど影響はないのかもしれない。実際、どのようにトリチウムが発光塗料に含まれているのだろうか。

*1 夜光塗料のお話
*2 なぜ光る?蓄光顔料(蓄光・夜光塗料)の基本原理と蛍光との違いを徹底解説 - マルチカラー蓄光材【ルミックカラー《LumickColor》】
*3 やさしい放射線の話
*4 原子核の崩壊
*5 20010614 重水素
*6 塗料一般に付いて
*7 残光性硫化亜鉛タイプ蛍光体GSS
*8 TPL HOME PAGE トリチウムって何?
*9 20020825 ヘリウムの発見
*10 What is polymer ?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?