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20010614 重水素

 重水素$${^{*1}}$$というのは水素の同位体元素で核融合の材料になったり、水分子の水素原子と入れ替わって重水$${^{*2}}$$となり原子炉$${^{*3}}$$の減速材などに使われたりする。

 重水素の由来は普通の水素よりも中性子が一つ余分に原子核に入っているので、質量数が大きいことから「重い水素」なのであろう。中性子が二つ入っている水素は質量数が三倍なので「三重水素」と呼ばれる。

 重水素は英語でdeuteriumと綴り、「ジューティリアム」と読む。語源は「deuter」+「ium」で前者はギリシャ語で「第2の」という意味、後者は元素を表す接尾辞である。「ium」はギリシャ語からのようだが、詳細はよく判らない。重水素の「じゅう」とdeuteriumの「deu」はうまく洒落になっている。もともとこれを狙っているのかも知れない。「複水素」「倍水素」でもいいはずである。

 三重水素では重水素のように巧く洒落にならなかった。英語ではtritiumなので全然合わない。tritiumの語源はdeuteriumと同じで「trit」はギリシャ語で「第3の」という意味である。

 日本語は「水素」「重水素」「三重水素」と語源が判りやすくなっている。英語は「hydrogen」「deuterium」「tritium」で後の二つは水素の仲間だと言うことが判らなくなっている。「hydrogen」は「hydro」+「gen」で「水(ギリシャ語)の素(フランス語)」だから水素だと言うことが判る。

 更に「重水」は「重水素で出来た水」、「比重が重い水」という意味に取ることが出来て重水素との関わりが見えてくる。だが、重水を英語にすると「heavy water」となり重水素との関わりが薄くなってしまっている。しかも「heavy」も「water」も生粋の英語だから語源の関連性の整合が崩れてしまっている。日本語の場合は「水(みず)」以外、全て漢語である。

 「水素」「重水素」「三重水素」「水」「重水」は日本語の科学用語にしては珍しく整合性が取れている。

*1 核融合用語集
*2 水の話
*3 原子力についてのちょっとしたお話

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