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20070117 決死の芸術画像

 何とも変な芸術画像を見つけた。ある男性の勃起した陰茎に別の人物が唇を付けている様子を横から撮った画像である。そしてその陰茎の下にある陰嚢には手が添えられている。ただし、唇を寄せている人物が女性なのか男性なのかは、その画像からは判別が付かない。どうしてか。

 その画像はX線透過写真$${^{*1}}$$だからである。唇を寄せている人物の頭蓋骨や頸骨の様子は良く分かる。歯の詰め物は金属製なので一番はっきりと写っている。陰嚢に添えられている手の骨も見える。しかしその本人の性別は判らない。

 X線写真$${^{*2}}$$なので、骨のない陰茎や陰嚢は殆ど透過した外観しか写っていない。陰茎をよく見ると亀頭$${^{*3}}$$の根本部分で皮膚が弛んでいるので、完全に勃起した状態ではないかもしれない。

 これを撮影するのにカメラではなく、おそらく医療用のX線撮影装置$${^{*4}}$$を使っているはずである。そんな装置の前では思うように勃たないのかも知れない。この「芸術」画像を作成するためにモデルとなった二人はX線に被曝$${^{*5}}$$していることになる。制作者の指示で何度も撮影したかも知れない。病気でもないのに身体に悪影響があると判っているX線$${^{*6}}$$をあびるのだから、決死の芸術行為である。しかも制作者本人ではなくその協力者の健康が害されるのである。見方によっては非常に問題のある芸術画像だろう。もしかしたらモデルの一人は制作者本人かも知れない。

 この画像の制作者$${^{*7}}$$の他の作品を見ると「透視」が作品全体の主題になっているようだ。何かの装置の透視図$${^{*8}}$$や枠だけでできた機械$${^{*9}}$$、X線写真で作ったステンドグラス$${^{*10}}$$など。

 ここで思い出されるのは、レオナルド・ダ・ビンチが描いた人の交合断面図$${^{*11}}$$である。とにかくいつの時代も人の考えることはそれ程変わらないと言うことか。

*1 Kiss 2
*2 エックス線
*3 20011225 亀頭
*4 放射線科の部屋・一般撮影室 -青森労災病院-
*5 20010628 テラヘルツ光
*6 X線検査におけるQ&A
*7 Wim Delvoye
*8 Works for Wim Delvoye
*9 Caterpillar - NY - Chantier (Madison Square Park)
*10 Urania
*11 20040326 レオナルド・ダ・ビンチの断面図

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