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20010628 テラヘルツ光

 光とは何か。光とは太陽、星、電灯、ホタルなどから発せられて目に明るく感じられるもの、と新明解国語辞典$${^{*1}}$$にはあった。web上の辞書$${^{*2}}$$でも大体同じようなことが書いてある。

 光とは目で感じることであって、光という物理現象自体を指しているわけではない。少なくとも一般の人々にとってはそうである。「光は電磁波の一種である$${^{*3}}$$」という言い方は電磁波の種類を説明しているだけで、「目で検知することが出来る電磁波」という意味である。

 目が見えない人にとって光は存在しない。「目で検知することが出来る電磁波」はその人の周りにあふれているが、それが見えないから「光」はない。一方、光を見た時と同じ刺激を脳に何らかの方法で直接与えれば「光」が見えるだろう。「光」は現実のものではなく「感覚」として捉えた方が本質が見えてきそうだ。

 上の考え方からすれば、「見えない光」というのはない。そもそも見えなければ「光」ではないからである。こうすれば電磁波をその波長で分類した時、光とその他の電磁波との境界線$${^{*4}}$$を明確に引くことが出来る。従って赤外線も紫外線も「光」とは言えない。赤外光、紫外光という言葉は厳密さを欠く。

 テラヘルツ光$${^{*5}}$$という言葉がある。電波と光の境界領域にある光$${^{*6}}$$のことをその周波数から名付けられた。「テラ$${^{*7}}$$」とは10の12乗を表し、「ヘルツ」は周波数の単位である。このテラヘルツ光を発するには自由電子レーザ$${^{*8}}$$という巨大な装置が必要であったが、最近、机に乗るぐらいの大きさの装置$${^{*9}}$$でテラヘルツ光を発振させられるようになったらしい。

 テラヘルツ光はプラスチックや紙、歯、骨、乾燥食品などを透過することから、被曝の心配があるX線に代わるものと期待$${^{*10}}$$されている。

 この新しい電磁波の名前を付ける時にもう少し配慮が欲しかった。「テラヘルツ線」「テラヘルツ波」とすれば光なのか電波なのか悩まなくても済む。

*1 SANSEIDO Co.,Ltd.新明解国語辞典
*2 ひかりの意味 - goo国語辞書
*3 光について考える
*4 電波 ■わかりやすい高校物理の部屋■
*5 テラヘルツという名の新しい「光」の開拓
*6 量子半導体構造におけるテラヘルツ・ダイナミクス
*7 国際単位系(SI)
*8 iFEL, Osaka University / 大阪大学 自由電子レーザー研究施設
*9 卓上型波長可変テラヘルツ光源を開発
*10 か・ら・だ / け・あ

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