小説『恋侍』、講談社より発売されました!
拙著の新作小説『恋侍』が講談社より出版されました。
恋侍、というタイトルだけあって恋愛ものの小説です。
とはいえ表紙を見て頂ければ分かるとおり、「超純愛!」「泣ける!」というよりも「ポップ」で「笑えるコメディ」としての恋愛小説となっています。
小説の主人公は落合正泰という二十代会社員(恋愛経験ゼロ)。
高校時代は友人が少なく、女子生徒ともまともに口がきけなかったような、自称「青春難民」の青年です。
ただ地味な青年だっただけでなく、彼は自分とは真逆の「青春の光を全身に浴びて輝いていた学生たち」への強いコンプレックスも抱えています。体育会系の部活で活躍していた男子達のことを「太宰や三島どころか、ろくに手塚治虫すらも読んだことがない」奴らとして軽蔑しながら「日陰を探して歩くような青春」を送っていました。
この落合くんが、偶然、中目黒の居酒屋で「高校時代のアイドル・大崎さん」と再会するところから物語は始まります。
高校当時の大崎さんは、生徒だけでなく教師を含む全校的アイドルでありながら、誰とも交際することなく卒業した伝説の女生徒でした。告白して玉砕していく男たちの屍の山を指して「大崎無双」と呼ばれていたほどでした。
もし、高校時代のままの落合くんなら、そのままほとんど会話を交わすことなく立ち去ったでしょう。しかし社会人になった彼は、目覚ましい成長を遂げていました。
というのも、とある人物から「恋愛技術」を学び、百戦錬磨の恋愛の達人レベルにまで恋愛技術(だけ)を高めていたのです。女性に対して敬意を払い、彼女たちを楽しませ、その上で彼女たちを十全に恋に落とす、その技術を落合君はマスターしていました(まだ実践したことはないけれど)。
あの頃の自分とは違う。
そしてあの暗黒の高校時代、誰もが憧れて、誰もが絶望した伝説のアイドル・大崎夏帆がここにいる。
と刀を抜く恋侍が、中目黒の街に現れた……。
この小説は、そんな落合くんが頭の中を妄想でパンパンに膨れあがらせ、大崎さんとの会話のひとつひとつに仮定と検証を繰り返しながら、恋愛頭脳戦を進めていく物語です。
本作は「東京カレンダー」のWebサイトで連載していた小説に大幅に加筆して生まれた作品です。当時はまさかここまで長く個性的な物語になるとは思ってもいませんでした。
それがその個性故に(あるいは落合君の奮闘故に)、神木隆之介さん、三吉彩花さんを主演に迎えて音声ドラマ化されることになりました。この落合くんを演じる神木さんの神がかった演技については、過去の記事でもご紹介したとおりです。
この作品は、小説が好きな方、恋愛物語が好きな方、あるいは笑えるコメディが好きな方に、心から楽しんで頂けるような作品になったかと思います。
ぜひ年末年始の読書のお供にして頂ければ、幸いです。