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映画評「グレイハウンド」

トム・ハンクス主演の戦争映画が、いきなり家で観られる。

ソニーが作った映画を、Appleが買う。

良い時代なのか、変な時代なのか。

予告編を見たときから気になっていたので、鑑賞しました。

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スタッフ・キャストは諸々調べていただくとして、

上映時間、91分!

という点を、まず強調させてください。

素敵な上映時間。

良いね。隙間時間にぴったりだ。

Appleユーザーは、ぜひ観て欲しいです。

最近Apple製品を買った方なら、勝手に無料で付いてきてる可能性高いですし。

以下、核心には触れませんが、まっさらな状態でご覧になりたい方は、避けたほうが良いかもです。

あらすじ

「グレイハウンド」は、トム・ハンクス演じる主人公が艦長を務める駆逐艦の名前。

時に、第二次世界大戦下の1942年。
イギリスに物資を供給するため、アメリカ東海岸から大西洋を横断しまくる、連合軍側。
だがしかし、大西洋には、ドイツ軍の潜水艦・Uボートがウヨウヨ。
輸送部隊を守るため、航空兵力と駆逐艦が護衛として派遣されているが、距離上どうしても航空支援が望めない海域が空白として存在しており、そこでの戦いが描かれる。
群狼作戦(潜水艦が単体ではなく、「群れ」で作戦を遂行する)をとり無数に襲いかかってくるUボート。航空支援が望めない時間を、「グレイハウンド」を始めとした駆逐艦隊は、輸送船を守り抜き、生き抜けるか!

というお話。

珍しい、洋上の「戦闘艦」映画

潜水艦映画はそれなりに数多いですが、海上・洋上の「船」を主人公とした映画ってのは、あんまりないんですよね。

潜水艦映画であれば室内セットと、仄暗い海中の描写だけで最悪済みますが、「船」となればそうはいかない。

背景が存在するし、カメラの位置も、海上に構えるとなると、大変である。

その点、技術の進歩には感謝したいし、おかげさまで、いままで観られなかった映像を堪能することができます。

これが大迫力。

左右に機雷をばら撒くシーン、浮上したUボートを目視で砲撃するシーン、艦上からの魚雷航跡、等々。

こんなん、嫌いなわけないじゃない・・・。大好物です。

「ハンターキラー」「バトルシップ」の戦闘描写が好みの方は、特に外さない映画だと思います。

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脚本、「トム・ハンクス」

今回、トムハンクスは、主演のほか、「脚本」も担当している。

観賞前は、「なんでこの作品をトム・ハンクスがわざわざ脚本を書いたんだろうか。そんな必要あったのだろうか。」と疑問でした。

だが、見終わっていると、「らしさ」に気付くことができ、それは「上映時間の短さ」とも関わってきている気がする。

それは、「役者」への信頼である。

本作、良い顔の俳優がたくさん出てくる。

細かい背景は、語られない。
出港前の家族描写等、「人間ドラマ」を描こうと思えば、いくらでも肉付けできるはずであるのに、そこはばっさりと省略され、物語はいきなり洋上かつ航空支援が望めない海域に突入してからスタートする。

非常に思い切った構成だが、役者の表現力を信頼してこその決断だろう。

それぞれ役割は異なるものの、それぞれの「プロ感」が十分に伝わってくる。

トム・ハンクスが演じるのは、駆逐艦の艦長。

彼すら、最低限度の描写しかされない。3分間くらいで、「恋人を本土に残してきた」という設定が語られるのみである。

「セリフに頼るのでなく、行動と表情と雰囲気で表現ふるのが役者だ!」

と、トム・ハンクスは考えているのでは無いか。そんな見方さえできる。

おかげで、上映時間91分は、中弛みせずに、がっつり「戦争」ができるってものである。

「艦長」「組織」映画として

劇中は、トム・ハンクス演じる「艦長」の目線で99%語られていく。

ドイツ軍も、他のクルーも、ほとんど単独の目線はない。

その結果として、「艦長」が担う重責と、逆説的にだが、個々人の役割によって作戦を遂行していくという、「組織」としての面が強調されていく。

聖徳太子ばりに、様々な報告を同時に受け、指示を出していくトム・ハンクス。

「敵潜の発見しました」「本国からの指令です」「俺が操艦する」「レーダーが不調です」「ご飯ができました」「ジャケットとってきて」「機雷がもうないです」等々。

マルチタスク、ここに極まれり。自分には、無理だ。

怒涛の報告&指示の仲、ちょっとした言い間違えや、逡巡をしていると、クルーからは一瞥をされ、不安が蔓延していく。
恐怖に怯える、部下の空気が伝わってくる。やだな、こんな職場。

でもまぁクルーにしてみれば、ポンコツ艦長には命を預けられないため、死活問題である。

現に、鑑賞を進めていくと、奮闘はしているのだがUボートに翻弄されまくる展開に、視聴者も不安になっていく。

「この艦長、もしかして無能なのかしら・・・」

休まることのない怒涛の戦況で、それはトム・ハンクス自身も感じていることだ。

「俺がやってることって、大丈夫なんかいな」

ー たった1隻で艦隊の命を守り抜いた、知られざる奇跡の実話ー

なんかではなく、結構被害も出る。

職務にひたすら誠実に向き合った、艦長およびクルーの物語だ。

故に、クライマックスには、爽やかな感動が待っている。

まとめ

「役者の力を信じている」脚本
故に、無駄な展開に時間を割くことなく、緊張感が途切れない構成
フレッシュな、洋上戦闘描写

満足度高し!

映画館で観たかった、という愚痴より、この映画を速やかに配信してくれたことへの感謝の方が勝る。

短い上映時間の戦争映画ってことで比較すれば、「ダンケルク」って、随分と勿体ぶった間延びした映画だったな、
という気さえします。

褒めすぎな気もしつつ、、、また別に書くこともあるかもしれないが、「ダンケルク」てあんま好きな映画じゃないんですよね。

とにかく必見です。ぜひ。


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