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映画評「花束みたいな恋をした」/日本の「ラ・ラ・ランド」
よく、毒舌御免!映画評みたいなので、「金を払ったんだから、いくらでも乏して良い」みたいなスタンスをとる方、いらっしゃいますが、、、。
同感が7割。異論が3割、というところが、私のスタンスです。
自腹だから何を言っても良い。
それはそうなのだけれど、一歩間違えれば、ただのクレーマーである。
例えば、私はキノコ類全般が苦手なのですが、それなのに、キノコ料理店に食べに行って、食べログで低評価つけるのは、やっぱ駄目でしょう。
ディズニーランドには、そこは「夢の国」っていうのを前提にしている人しか、やっぱり入っちゃいけないのである。
と考えると、怪獣とカーチェイスと爆発、つまりはハリウッド底抜け超大作好きの私が、旬の俳優を使った、和製恋愛映画を観るってのは、躊躇する。
しかしながら、「お金を払わない奴に意見を言う資格はなし」というのは、一方で「真」。
悩みに悩みましたが、意を決して、映画館へ行って参りました。
気分は、当たり屋的検証をする、ユーチューバーです。
果たして結果や如何に。
「花束みたいな恋をした」(2021年/日本/124分)
結論。
素晴らしい映画でした・・・。
嫌味でも、隠喩でも、暗号でもありません。
本当に、素晴らしい映画でした・・・。
毛嫌いしていた自分を、消し去りたい。脱帽どころか、捨帽したい気分です。
※以下、若干ネタバレかもですが、予告編程度の言及含みで感想
改めて、あらすじは下記。
東京・明大前で終電を逃し偶然に出会った、麦と絹。
バイト、同棲、就活。
いつでも二人で一緒にいた20代のぜんぶが、ずっと楽しかった。
猛スピードで加速する恋の忘れられない<最高の5年間>を描く、
不滅のラブストーリー誕生。
(
この事前情報通り、一組のカップルの始まりと終わりを描き続ける、ただそれだけといえばそれだけのお話・・・のはずでした。
ただ、その描き込みが非常に素晴らしい。
例えれば、日本版「ラ・ラ・ランド」だと、自分は感じました。
「ラ・ラ・ランド」から、ミュージカル・ダンス・歌、音楽全般を抜いたような、そんな感じ。
※褒めてる
「ラ・ラ・ランド」の場合、人生の輝きやら恋の高鳴りや、倦怠に向かう心の模様を、アップテンポ・華やか・ムーディな数々の音楽で盛り上げていました。
音楽で進行・表現するという点において、まさにミュージカル映画であったわけですが、この「花束みたいな恋をした」には、当然ミュージカル要素は全くなし。
その代わりに、日常のディテールを、膨大に描きこむことによって、二人の恋愛を語っていく。
日本映画には特に珍しい演出に感じますが、作家・映画製作者・音楽家などの個人名、架空ではない飲食店や地名や商品そのもの、マンガやテレビ及びスマホゲームのタイトルに至るまで、固有の名称がバンバン飛び出してくるのです。
押井守、今村夏子、「ゴールデンカムイ」、天竺鼠、早稲田松竹、ゼルダ、きのこ帝国、パズドラ、SMAP、等々等々等々等々等々。
びっくりするくらい気が合うね私たち、てことから付き合い出す菅田将暉と有村架純ですが、その象徴として、追いきれない&そもそも知らない、固有名詞がばんばん出てくる。
「レディ・プレイヤー・1」並の、怒涛のコンテンツ量
驚くべきは、それが全然鼻につく感じがせず、物語と溶け込んでいる。
私が知ってることもあれば、全く知らないこともあったのですが、「こいつらなんの話してんだ?」てことには、あまりならない。
「シン・ゴジラ」や「半沢直樹」でも、早口でよくわかんない単語が速射されていましたが、単語そのものというより、展開が重要だったため、気にならなかったのと同様。
なんかよくわからんことも多いが、めっちゃ二人がジャズってるのが伝わってくる。
有効な小道具として、機能しています。
悲しいのは、それが倦怠から別れに至る展開にも、付いてくることです。
あのときはあんなに盛り上がった話題なのに、あなたが興味あることは何でも知りたいと思ったのに、もうそんな気持ちにはならないのよね・・・という哀しさ。
ストーリー展開も、日常のディテールを重視した展開。
いつでも二人で一緒にいた20代のぜんぶが、ずっと楽しかった。
この通りで、124分の上映時間の大半、数十秒〜長くても5分程度のイベントが、繋ぎ合わさって出来ているのです。
一個一個のエピソードに言及することは避けますが、そのひとつひとつ、内容もあるあるなら、菅田将暉・有村架純以外の登場人物も、妙な現実感がある。
それぞれ、甘酸っぱかったり、笑えたり、悲しかったり、どれも忘れがたい。
でも、楽しみつつ、終盤まで、「そこそこ楽しめたな」くらいに思ってたんです。
膨大な日常のディテールの中での、自然な演技が、テンポよく続いていく。
てことは、
「あんなこともあったしー」
「こんなこともあったけどー」
「季節は巡っててー、夏は暑くて冬は寒くてー」
「いろいろすれ違うことも出てきてぇ」
「別れることになりましたぁー」
という、日常切り取り系のまま、淡淡と終幕していくのかな。
でも、それだけでも十分に良い映画だった・・・なんつーことを思っていると!
ラストには、印象深いところでも2つ、実に映画的というか物語的な仕掛けがありまして、、、鳥肌ものの感動がありました。
どんでん返しではまったくないのですが、突如として、映画的カタルシスがやってくるのです。
これ、凄い!
「花束みたいな恋をした」ていう、一見サムいタイトルの意味が、上映終了後から今でも、すーっと体に染み渡っております。
ラスト、悲しいけれど何か前向きになれるような、人生って良いものだと感じられる余韻。
日本版「ラ・ラ・ランド」です。
てことは、「ハ・ハ・花束」です。
もしくは、もっとエモーショナルにして、和田アキ子風に、「ハッ・ハッ・花束」です。
※思いついたので、言ってしまいます。
舐めてました。
素晴らしいです。
抑えられた演出、生活感のある素晴らしい美術・小道具、俳優・女優の演技と、そこからの実に映画的なラスト。
傑作だと思います。
たとえ私がキノコが嫌いだったとしても、このキノコ料理は生涯忘れることはないだろう。
もう1回観ようかな・・・。少なくとも、人生のどこかで、必ず見返すでしょう。
世界に数例だけの難病で死ぬラストかな?
どうせ、土砂降りの雨にうたれながら、「うわぁー!」とか叫んだりするんだろ?
誰が観るんだこんな映画。とか思ってたのが、本当に恥ずかしい。
懺悔・罪滅ぼしとして、勝手に本作のアンオフィシャルサポーターになることにしました。
その一環として、今週は、たとえ強引でも、「花束みたいな恋をした」のことと紐付けながら、語ることにします。
ぜひ、「花束みたいな恋をした」、劇場でご覧ください。
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