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【詩】走る

走る

デマが走る
軍人が、警察官が、ジャーナリストが、走る

デマが走る
一般市民が、善良な父が、善良な兄が、走る

片手にデマを握り締め
もう片方の手に
銃剣を、日本刀を、竹槍を、熊手を、木刀を、斧を携えて
九月の、大地震に襲われた町を
群衆が走り抜ける

デマが、人を殺した

いいや、そうではない
人間が殺したのだ

私の同胞が
日本人が
善良な市民たちが
朝鮮人を
中国人を
社会主義者を
殺したのだ

切られ打たれ殺されて
道端や川に投げ捨てられた者の屍を
デマは踏んづけ踏み越えて
先へ先へと走ったろう

あれから百年経った今
デマはどこを走っているだろう
まだ、この国のほうぼうを走り回っているだろう
 



本当は9月1日に載せるべきだった詩ですが、複数の詩誌に応募していたためnote掲載を見送っていたのでした。
残念ながら詩誌には落選してしまったので、ここで公開します。

以下は、関東大震災直後に起きた朝鮮人や中国人などに対する虐殺について、私が読んだ中で良かった本です。
・西崎雅夫編『証言集 関東大震災の直後 朝鮮人と日本人』
・加藤直樹『九月、東京の路上で 1923年関東大震災ジェノサイドの残響』
・加藤直樹『トリック 「朝鮮人虐殺」をなかったことにしたい人たち』

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