【詩】恐れ
母の手に刻まれた皺が恐ろしくて
私はそれを直視できない
母が生きてきた証である皺よ
母が家族のために働いてきた証である皺よ
まともな孝行娘なら
その手を取って皺を撫で
労りに満ちた穏やかな声で
感謝の一つも言うのだろう
けれど私は、母の手の皺を直視できない
手の皺は、老いの象徴だ
あの皺は、私の未来だ
皺そのものを恐れているわけではない
自分の手に皺が刻まれる未来を、恐れているわけではない
手の皺が象徴する老いが、恐ろしいのだ
いつか私も年老いて、体はどんどん鈍くなる
今よりもっと、動けなくなる
ただでさえ、生まれたときから不如意であるこの身体が
老いによって、さらに私の意に沿わなくなってしまうのか
この身体は、じわじわと老いに蝕まれていくのか
これ以上の……これ以上の……
これ以上の、ままならなさが!
母の老いを恐れるのではなく
その手に自分の未来を見て恐れるとは
私はきっと、冷酷なのだろう
けれど、それのいったい何が悪いのだろう
自分が生きていることの、生きていくことの恐怖は
自分しか感じることができないのだ
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