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【詩】勝負の行方

我が細胞に侵入し、寄生し増殖するウイルスよ
お前はいったい何を望んでいるのか

我が体内で増殖し続けるお前に
いつかこの身が負けて息絶えるとしても
その時こそ、お前はもはや増えること叶わず
死に絶えた細胞どもとともに滅び焼かれるしかないのだぞ
それが、お前が望んだことなのか
その時、お前は勝者なのか

しかし、そんなことはめったに起こるまい
我が白血球だかT細胞だか何だかが、
総力挙げてお前を駆逐せんと攻撃するだろう
そうして、どんなに我が身が苦しもうとも、どんなに時間がかかろうとも
いつかはお前を消滅せしめ、この身体を取り戻すだろう

その時、我は勝者なのか?

お前を撃退し、生き延びたとしても
それはつまり
これからも、ありとあらゆる無限のリスクを背負って
生き続けねばならないという重荷でしかなく
しかも、いつかはウイルスなり何なりに負けて息絶えるしかない運命

我もお前も
始めから、終わりは決まっている
いつかは負けることが決まっている

勝者なんてものは、存在しないのだよ

我々は、遺伝子の奴隷
終わりが分かりきっていても、
遺伝子の為すがままに、破滅に向かって突き進むしかない

いま、ほんのいっとき勝ったからって
それがどれ程のことだと言うのだ
不毛な戦いじゃないか、なあ?

勝っても勝っても、安息の地はないのだ
我々は、不毛な奴隷じゃないか、なあ?

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