【詩】見殺しにした言葉
言えなかったこと
言わなかったこと
言いたかったこと
言うべきだったこと
言わされたこと
言いたくなかったこと
言わせてもらえなかったこと
言わざるをえなかったこと
頭の中に生まれたのを見て見ぬふりして
見殺しにした言葉
喉に張り付いたまま
枯れ果てた言葉
口から溢れそうになるのを
抑え込んで抑え込んで押し潰した言葉
肺の底に澱んでくすぶり
肥大する言葉
渾身の真実だったのに
鼻で笑われ、殺された言葉
急かされて、抜け殻のまま
吐き出された虚構の言葉
言葉を見殺しにするとは
「わたし」を見殺しにすること
言葉を殺されるとは
「わたし」を殺されること
埋葬も、弔いも、供養もせず
粉々に朽ちるまま逝かせてしまった言葉たち
殺された言葉は
二度と戻らない
殺された「わたし」は
二度と戻らない
たとえ同じ字の並びが再生されても
それはもう、殺された最初の言葉と同じではない
新しい無数の言葉たちが
殺された最初の言葉の場所を埋めていく
見殺しにされ、場所を明け渡すしかなかった言葉は
いったいどこへ行くのだろう
見殺しにされた、あのときの「わたし」は
いったいどこを彷徨っているのだろう
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