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【詩】解毒する毒

口から憎しみが溢れそうな夜は
君が飛んで来て
この唇を塞いでくれればいいのに

あぁ、そうか
飛んで来てほしいような、“君”なんていう人物は
どこにもいないんだった

自分を救えるのは自分しかいないから
架空の誰かを想像して
飛んで来てと願うなんて、馬鹿らしい

仕方ないから、一日三度の飯時に
米や野菜や肉魚と一緒に
憎しみも必死にもぐもぐ咀嚼するけれど
そればかりは肛門から出てこないから
トイレに流すこともできない

誰かが自殺すれば
テレビでもネットのニュース記事でも
解毒剤もくれないような相談窓口を紹介している

自分を救えるのは自分しかいないけど
せめて自分をアシストしてくれるのは
慈愛に満ちた口調と眼差しなんかじゃなく
この世よりも醜悪なフィクションくらいでしょう

(ん? そんなもの、あるか?
この世よりも醜悪なフィクションなんて?)

口から憎しみが溢れそうな夜は
大勢が無残に殺される小説を読みたい

ねえ、傾聴するくらいなら
傾聴なんか要らないから
強力な解毒剤をちょうだいよ

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