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【詩】陽炎

夏、それは音の重層

四方八方から音に埋め尽くされた、剥き出しの夏の裸体

朝五時過ぎの、鳥たちの目覚め
昼夜問わずの蝉時雨
勢いよく吹き出す冷房の風
揺れては鳴る街路樹の葉
自販機からペットボトルが転げ落ちるガランゴロン
素麺のガラス容器の氷
駅を行くスーツケース
終戦記念日のサイレン
海の家のはしゃぎ声
かき氷の氷削り機
アスファルトを叩きつける夕立
風鈴、噴水、室外機
お囃子、花火、盆踊り

音、音、音、音

そして
すべての音の背後で
日差しが静かに大地を焼き尽くしてゆく、無音の音

音に埋め尽くされた夏の最大音
それは、人間の耳を聾してしまい
もはや人間には聞こえぬ
太陽の光の爆音であった

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