見出し画像

【詩】匿名希望

雑踏に、埋没していたい

独りきりで気ままに歩ける道

そこでは
二足歩行者と
車椅子ユーザーに
さしたる違いはなく

ジャッジされず
眼差されもせず
「できる人間」とも「できない人間」とも思われず
「らしさ」や「わきまえ」を求められず
ラベリングで存在を特異化されることもなく
価値を証明せずともよく
誰に気に留められることもなく
猫なで声で気遣われることもなく
善意に頼らなくともよく

私は、ただの人でいられる

特別な価値はないが
価値を剥奪されてもおらず
そこをただ歩いているだけの
どこにでもいる、名もなきただの人として
埋没できることの自由よ

群生の孤独から解放され
独りでいることの孤独を取り戻せる平穏よ

独りきりで自由に歩ける道

そこでは
存在の重荷はしばし鳴りを潜め
埋没し匿名化した私は

ようやく

ただの人として呼吸できる
 



この詩に登場する ”群生の孤独” については、以前『群生』という詩を書きました。


作品を気に入って下さったかたは、よろしければサポートをお願いします。創作の励みになります。