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【詩】冬の陽

冬の晴れた朝
外は、頬を刺す空気が清らかに張り詰めているが
部屋には南の窓から陽が射し込み、空気を弛緩させる

ベッド、机、鉛筆立て、目覚まし時計、本棚を順々に照らす陽は
いつしか部屋の三分の二にまで達し、床に窓枠の濃い影を描く

明るさであり、暖かさであり、数時間の慈悲である陽よ

窓際の陽だまりに佇めば
寒さに縮んでいた筋肉も関節も血管も
湯煎されたように弛み、ほぐれ、溶けて人心地つくのだ


冬の晴れた夕暮れ
帰路で冷たい風に身を固くし、耳も指先もかじかんでいるのだが
目は、まだ沈む前の決然とした陽に射貫かれている

それは、冬の陽が一日のうちで最も存在を際立たせる時刻であり
頭上ではなく真正面から、強烈な陽光が視界を奪いに来る

強さであり、厳しさであり、北風の友である陽よ

西に向かって歩を進めれば
暖かくはないが鋭い光が、道を照らしながら接近を拒み
まるで大いなる啓示を与えんとするようだ


どこかで、いや、この部屋で、たとえ血が流れようとも
あの道端で、たとえ誰かが飢えて倒れようとも
いつも、そのように在る、冬の陽よ

低いがゆえの恩寵よ
低いがゆえの呵責無さよ

春の陽より凝縮され
夏の陽よりやわらかく
秋の陽より間近な

そのようである、冬の陽よ
 



投稿したあとに気づいたのですが、今日は立春ですね。
だから、この詩は、先週載せたほうが良かったかもしれません。
でも、先週はまだ、この詩を思いついていなかったのです。

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