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夜の楽しみ

【2月15日・夜】

熱いお茶を飲みながら、小説の続きを開く。
好きな作家さんの新作で、書店で一行目を読んでみただけで世界観に引き込まれ購入を即決した。学生時代からこの作家さんのファンだった。読んでいると、水が体に染み渡るようにぐいぐい心に入り込んでくる。この方の文章には、そういう魔力がある。

このまま永遠に魔力に包まれていたいが、時計を見て本を閉じる。明日のためにも早寝をしなければ。

部屋に入るとき、あえて電気を点けずに暗闇に目を慣らす。昼間の晴天を思い出して、星が見たくなったのだ。
カーテンの隙間、冷気が伝わる窓越しにシリウスの輝きが見える。今日は季節が冬に戻ってしまったかのような、肌寒さを感じる一日だった。明日の最低気温は今日よりさらに低くなるそうだ。

すぐにあたたかい布団にもぐり込むつもりだったが、星をひとつ見ただけでは満足できず窓に手を伸ばす。こんなに晴れているのだ。ほかの星も見ないともったいない。

そろそろと窓を開けると、つんと冷えた空気が鼻をかすめ、オリオン座の輝きが見えた。オレンジ色のオリオンの右肩のベテルギウス、三ツ星みつぼし、腰に差した短剣の部分が、三ツ星のすぐ下で輝く子三ツ星こみつぼしにあたる。そして左足に輝くリゲル。

眠る前の同じ時間帯に星空を見上げるので、冬の星座たちが少しずつ西に向かって動いているのが分かる。この間見上げたときは、おおいぬは顎を上に向けていて、真南のオリオン座が悠然とした姿で夜の町を見下ろしていた。今日はおおいぬの顔は正面を見つめる角度で、オリオンの左肩が少し下がっている。
窓から体を乗り出せばすぐに見えたおうし座の星団すばるも、今はもう屋根の向こうに隠れて見えない。立春を過ぎてから身近で春の兆しを感じることが増えたが、こうして星を見ながら季節の移ろいを感じるのも良いものだ。


風邪を引かないうちに窓を閉め、布団に入る。よい夢を見られますように。


2023.02.16 朝

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