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創作 『おともだち』

 明日、世界が終わるらしい。

 どこかの星がミサイルを地球に向かって飛ばしたとか、実際はそのミサイルに威力なんてなかったけど、たまたまどこかの衛星に衝突してそのかけらが飛んでくるとか、衛星が爆発して地球の引力が歪んで明日には崩壊してしまうとか、何やらいろいろ言われている。実際のところ何が起きているのか誰にも分からないけれど、とにかく明日世界が終わるのは確実らしい。画面の向こう側では、ニュースキャスターが阿鼻叫喚と化しながら世界の終わりを告げている。その様子を何となく他人事のようにぼんやりと眺めながら、さて、何をしようか、なんてのんきに考えてみる。

 明日世界が終わるというのに、会いたい人もやりたい事も何も思いつかなかった。なんとなく街に繰り出してみると、通行人を殴る人間など、破壊的な衝動のままに行動する人々などがいた。失うものも何もなくなった人々の欲望があらわになっている。見知らぬ人に私も声をかけられた。失うものがないのは私も同じだった。もうどうにでもなれ、と思った。明日世界は終わってくれるのだ。それは私にとっての希望であった。

 その人の家についていった。焼くなり煮るなり何でもしろと思った。どうせ全て終わるのだし、どうにでもなれ精神になっていた私はもう何も怖くなかった。
 しかし、その人は私に何もしなかった。ただただ涙を流して、最期の瞬間誰かと一緒にいたかったんだ、と語った。

 その人はぽつりぽつりと話した。職も家族も失ってしまったこと、生きる希望がないこと、死ぬのは怖くて死ねないこと、一人ぼっちで死ぬのも寂しいこと、もう一度家族に愛されたかったこと。それは叶わないこと。

 私も少しだけ自分の事を話した。そして二人で泣いた。もうこの世界に私たちを救えるものはなく、世界の終わりそれこそが唯一わたしたちが救われる道だった。
 ようやく救われるね、と二人で泣きながら眠りについた。

 翌朝、世界は続いていた。ミサイルは嘘だったとか、隕石が軌道を変えたとか、地球は思ったより強かったとか、これまた理由は分からないけど、日常は継続していた。
 世界の終わりなんて都合の良い話はなかった。結局私たちはこの世界に取り残されてしまった。

 生きていかなければならなかった。

2020.11.21 過去作


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