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樹田 和(いつきた なごむ)
2022年4月24日 12:42
卵がひとつ。ここにある。いつからか、大事に大事に温めている。殻の色は時々変わる。白や、黒や、なんとも言えないまだら模様にも。中からコツコツ音がする。気がする。よく見ると、周りにも同じように卵を温めている人がいる。もっと大きなものだったり、小さくてもたくさんだったり。そして時々、その卵から、生まれる。大きく綺麗な羽を広げて。強そうな鎧に身を固めて。温め続けたそ
2022年4月20日 23:32
忘れられない手紙がある。細かい内容は流石に覚えてはいないのだが。ただそういう手紙をもらったことがあるという事実は、ゆうに20年以上経った今でも忘れられない。確か緑色のペンで、ノートの切れ端のような紙にしたためられたもので、今だったら思わす目を細めてしまうほどの、小さな可愛らしい字でぎっしり埋められていた。宛名は「○○さんのお友達さん」といった、いたく他人行儀なものだったようにおもう。